小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記SOMMELIER DIALY

グリム童話の「熱いたまご」

グリム童話に、
「水晶の珠」
というお話があります。

そこに、

「アツアツの生卵」

なるアイテムが出てくるんですね。

 

主人公は魔女の息子、三男。

子供の裏切りを恐れた魔女は、
兄2人を『空を舞うワシ』と、
『海に潜るクジラ』に
魔法で変えてしまいましたが、

運よく逃げ出したその若者は、
旅の途中で
『「太陽の城」に
閉じ込められたお姫様の話』
を耳にします。

 

「助けに行って、
すでに23人も殺され
ちゃっているらしいぜ。

あと一人失敗したら、
魔法が一生解けないんだとか。」

 

よし。
そのお姫様を助けるのは自分だ。

そう決めて、
お城へ向かいました。

知恵を駆使して
ようやくお城を発見、

お姫様と対面しますが、

何としたことか、
お姫様は醜い老婆の姿に
なっています。

 

「これは呪いなんです。」

「城を降りたところに
野牛がいます。

これを倒すと
腹の中にいる火の鳥が
飛び出してきますので、

どうかこの鳥が産んだ
“熱い卵”を割ってください。

中の黄身が“魔法の水晶”に
なっています。

これが魔法の呪いを
解いてくれます…!」

 

と涙ながらに
お姫様が語ります。

 

野牛…に守られた火の鳥
…の中にある灼熱のたまご
…の中にある黄身(水晶)が必要。

 

うーん、
なかなかのセキュリティですねぇ。

なべて世の中のシステムは、
これくらい厳重にしてある方が
良いのかもしれません。

 

さて、

その言葉を聞き、
勇気を奮い野牛を倒した若者ですが、

 

中から出てきた火の鳥は
空を飛んで逃げてしまいました。

grim2201710.jpg

しまった・・・!

と、思ったその刹那、
空から一匹のワシ、
に姿を変えられている長男が
火の鳥に襲い掛かり、
その爪で仕留めます。

 

ところが…!

カンジンのアツアツ卵が落下、
漁師の家に落ち
家ごと燃え上がってしまいます。

grim3201710.jpg

シマッタ・・・!

と、再度思ったその時、
海から一匹の大クジラ、
に姿を変えられた次男が

ザブン!と波を寄せて
火を消してしまいます。

 

急激に冷やされたこと、
また落とした衝撃から、
運よく卵がパッカン!と割れており、

難なく中の黄身・水晶珠を
取り出すことができました。

 

あとは、

その水晶珠をかざして、
お姫様の呪いを解き
魔法使いを降参させ
「太陽のお城」をゲット、

ついでに
兄さん二人の呪いも解いて
万事、めでたしめでたし。

…とまあ、こんなお話です。

 

◆お祝いの料理がモチーフ!?

この物語、
たまご屋のこばやしが読んで
興味深い点が2つありました。

一つは、
ウシの中に→トリの中に→たまご
という構造です。

 

ヨーロッパのお祝いには、

ゆでたまごを中に詰めた
アヒルや七面鳥の丸焼きが
饗されることがあります。

 

また、
砂漠のベドウィンの結婚式には、

ゆでたまごを魚に詰める
→その魚を焼き鶏に詰める
→鶏を子羊に詰め焼く
→最後にラクダに子羊を詰め
じっくり煮込む

…という
なかなかスゴイ料理があります。

 

もしかすると
そういった料理のイメージが、
このお話に反映されているのかも
しれませんね。

 

もう一つは、
「急に冷ますとたまごが割れた」
という描写。

 

実際ゆで卵を作るときには、
冷蔵庫から出したての
冷えた卵を茹でると、

お湯にいれたとたんに
「パキッ」とカラが割れてしまいます。

なので、
常温に戻してから
茹でるのがコツなんです。

 

なんとなく、
そういった知恵が
反映されているようで、
これまたとっても興味深いです。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学2017年11月11日