「日本料理」じゃない日本の料理?
村松友顕さんの「食べる屁理屈」というエッセイに、「日本料理」と日本人の関係についての、興味深い話がでてきます。
『・・・イタリア人にスパゲティの味を聞けば、「それはうちのスパゲティが旨いよ。」というし、中国人と麺やチャーハンなどもそういう感じだ。 つまり、外の店で食べている料理と、家庭で食べる料理のあいだに、それほどの落差がないというわけだ。 ところが、日本における和食や日本料理というものは、我々が家で食べている食事とはまるで違った食べ物である。 御飯とおかずの組み合わせに汁物と香の物を添えた家庭料理は、いわゆる料亭で出る和食や日本料理とは、スタイルも発想もまるでちがっているのだ。(中略)
しかし、我々が最も多く食べている家庭料理は、どうやら”和食”の領域にも”日本料理”の領域にも入らないらしいということは、おぼろげながら分かってきた。・・・』
確かに、我々が毎日食べる朝夕の御飯やいわゆる「定食」は、「日本の料理」でありながら”日本料理”じゃないんですよね。 外国人のイメージで「日本料理ってスバラシいですね。」といわれた場合、我が家の味をイメージしてしゃべる方は少ないんじゃないでしょうか?私を含め、ほとんどの方は料亭の会席なんかを想像しながらしゃべります。
手元にあるオレンジページブックスのレシピ本では、上記の様な日本式の家庭料理を「和ごはん」と表現しています。 なんとなく編集部の苦労もうかがえますね。 白い御飯に生卵、味噌汁と焼き魚と御飯・・・・・・、さて、自分なら毎日の家庭料理をなんと呼ぶだろうか?
「スローフード」「B級グルメ」なんて言葉もありますが、これもちょっと違いますしね
井沢元彦さんは著書の中、「あまりに常識と思われていることは、どの時代の文献にもわざわざ書かれたりしてはいない。」とおっしゃっています。 これは考古学上の文化についてのお話ですが、実は我々が毎日食べる、アツアツのたまごかけ御飯や、親子丼、味噌汁ごはんも、あまりに「ふつう」の食事であって特に定義も必要がなく、一言でいうと「ごはん」としか言い様が無いのかもしれませんね。