味の記憶、匂いの記憶・・・2
以前、「においと記憶」のお話を書きましたが、今回は「味と記憶」のお話。
皆さんは、夢の中で何かを食べたことはありますか?
もしかしたら、ゴチソウをいざ食べようとしたら(夢の中で)誰かがジャマしたり、目が覚めてしまったり、どうしても食べられないことの方が多いんじゃないでしょうか?
■脳がジャマをする・・!?夢の中での食事
作家の 阿刀田 高さんは、自身のエッセイの中で
脳は味覚の記憶を再現するのが苦手なんじゃないだろうか? と仮説を立てています。
つまり、夢の中で食事できないのは、脳が味を思い出すのを拒否しているから・・・。
なるほど、そう言われてみれば印象的な食事であっても「おいしかったなー。」という「快」の記憶はあって、その「味」そのものを正確に思い出すのはちょっと難しい気がします。
■味と風味の違い
そもそも「味」とは舌のセンサーで受容した信号の事を言うのですが、記憶される味覚は実は視覚や嗅覚、そして過去の記憶に影響を受けてしまいます。(注1)
例えばレモンとライムのように、酸味はほぼ同じでも見た目が異なると「ちがう味」として認識されます。
その証拠に、目をつぶって鼻をつまんで両者を食べ比べてみてください。違いを当てるのはかなり難しいハズです。
■味を忘れにくい料理の食べ方とは?
見た目や臭いに影響されやすいのは、味覚を記憶する脳の位置が視覚や聴覚と同じ部分だからなんです。ということは、しっかり味を記憶しようと思ったら、食べるときに視覚や嗅覚をしっかり働かせる必要があります。
逆に「ながら食い」をすると、味が良くわからなくなってしまう事が知られています。テレビを見てると、そっちに脳の機能を使われるんですね。
友達と「おいしいねー!」なんて言いあって五感をフルに使った食事は、その味を鮮明に思い出しやすいと言うわけです。
我々は一年にたった千回しか食事をしません。たとえ一人で食べる時でも、雑誌を眺めながら食べるんじゃなく、せめてひと口ふた口目だけでもじっくりその食事を見つめ味わってみましょう。
将来老人になり十分に食事ができなくなったときに、「味の記憶」の大切さがわかる日が来るのかもしれません・・・。