小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまごのビックリ科学 記事一覧

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

世界最大の卵、って何の鳥か知ってますか?

「そりゃダチョウだろう。」

とおっしゃるかと思います。

実は、ニュージーランドの国鳥・キウイ

あのカワイイ鳥の卵は、ある意味「世界最大」なんです。

キウイの卵はお母さん鳥と比べた大きさ』が世界一!

例えばニワトリさんの場合

だいたい体重が2kgほどで、タマゴは平均60gちょっと。

お母さんニワトリの3%くらいの大きさですね。

この比率、世の中のあらゆる卵でだいたい同じでして、

どの鳥も、親鳥さん体重の1~8%になります。

ダチョウのタマゴは1.5kgの重さがありますが、

お母さんダチョウは120kg、卵は体重比わずか1%です。

ところが、キウイさん!

お母さん鳥の体重はニワトリさんと同じく2kg程度ですが、

卵の大きさは何と!500グラム超もあります。

体重比で25%を超えるんですね。

うーん、すごい!

人間で言うなら、15kgほどの赤ちゃんを産む計算になります。

「小さく生んで大きく育てる」

という言葉がありますが、完全にその逆ですね…。

↑はウチの息子が15kgくらいのころですが、こんなんなるまでお腹の中にいるなんて……!

レントゲン写真で見ると、卵を産む前のキウイさんお腹の中はとんでもないことになっています↓

ほぼたまご!

いったいナゼこんなに大きな卵を産むのかというと、

元々キウイさんはダチョウやエミューのように大きな鳥だったそうです。それが外敵がいない中でだんだんと燃費の良い小型へと進化(?)していったのだそうな。

で、卵だけがそのままのサイズで残ったんですね。

ちなみに進化したことで、

羽が無くなりました。飛ばないので。

目もほぼ見えなくなりました。

その代わりに嗅覚がめっちゃ鋭くて

足もメチャクチャ速いんだとか。

かなり思い切ったステータスの割り振りですね。

不採算部門を切ってベンチャー化した元大企業、みたいなカンジでしょうか。

 

ダンナもスゴイぞ!キウィの子育て

そして、こんなに大きくなるまで苦労して産むのに、生まれてもまだ「たまご」なんですね(当たり前ですが…)

そこから温めて、ふ化させないといけないわけです。

しかも、

卵がふ化するまでの期間がモノスゴク長い!

ニワトリさんなら約21日ですが、キウイはなんと75日!

2カ月半も温め続けないと生まれません。

ただ面白いことに、温めるのはオス♂です。

ニュージーランドには「キウイハズバンド(キウイの夫)」という言葉がありまして、家事や子育てを積極的に手伝ってくれる夫のことをこう呼びます。

うーん、夫婦でスゴイんですねェ。

ぜひ世の夫の皆さまはキウイを見習って家事子育てに積極的に勤しんでみるべきですね

コロナ禍の自粛中は特に。

キウイのように、

世界最高!?の立派な子供に育ってくれるかも……!?

 

〇たまご屋として気になる!キウイ卵の味は…?

ステキな夫婦話をした後にどうかと思いますが、やはり卵屋としてはキウィ卵の味がきになります。

現在キウィはニュージーランドの国鳥なので、卵も親鳥も食べるのは法律で禁止!です。残念。

ただ、カンタベリー博物館の自然史担当シニア・キュレーターで、『Field Guide to the Birds of New Zealand』という専門書の著者でもあるポール・スコフィールド博士によると、キウイさんの肉と卵は「おそらく美味しくないだろう。」との事です。

仕事柄、キウィさんのはく製を何度も作られたそうですが、脂肪が多く非常に土っぽい腐敗っぽい香りがとても強く「ハッキリ言って、食べても不愉快な味だと思う」そうで、おそらく土中の虫などを主食にしている事が原因だろうと推測しています。卵の味は肉以上に食べるモノの影響を受けますので、たまごも味は期待しない方が良さそうです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:こんなにある!世界で食べられている鶏サン以外の鳥卵10種 | たまごのソムリエ面白コラム

(関連:1並びの日にちなんで世界一たまごを紹介します その2 | たまごのソムリエ 面白コラム

(関連:超めずらしい!哺乳類にも卵を産む生き物がいる|たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2020年05月18日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

「卵が先か、鶏が先か」

という言い回し、聴かれたことがあるんじゃないかと思います。

日本語で言うと「イタチごっこ」でしょうか。

これ実は、西洋では昔っから、

いろーんな分野で「どっちが先か」を真剣に議論しているんですね。

新たな解釈が出るたびに、ニュースになるくらい。

たとえば、6年前には『鶏体内中のあるタンパク質が無いと、卵の殻ができない』という事が英国の大学共同研究により判明し、「ついに解明!鶏が先だ!」と大々的にニュースにもなりました。

CNN.co.jp:「鶏が先か、卵が先か」の謎、ついに解明?2010.07.15

つい先週のyoutubeチャンネルにも同様の話題が出て、

その結論は『卵が先』

となっておりまして、

これまた議論の的となっております↓

さて、“各分野”でこれまでに出された意見をご紹介しますと、、、

 

<生物学的には>
「“卵をつくるタンパク質成分”を鶏が持ってるから、鶏が先!」
「『鶏っぽいもの→卵→鶏』と進化したので、卵が先!」
と議論中

<数学では>
卵の数⇒育った鶏の羽数を予想” “親鶏の数⇒生まれた卵の個数を予想”と、どちらも数学的にやってみたら、前者だけ予想できた。だから卵が先。(グレンジャー因果性予想なるものを使います)

<宗教的には>
聖書では『神が「鳥は地に増えよ」と祝福し、創造した』とあるので、鶏が先。 でもヒンドゥー教では『「宇宙の卵」から世界は生まれた』とあるので、卵が先。(ちなみに聖書には“鶏卵”は一言も出ません・参照)

<日本では…>
記録としては、ダントツで鶏が先。 
神話のなか、つまり「古事記」「日本書紀」にはすでに「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」こと鶏サンの記述があります。 とはいえ体も小さかったため食用にはなっておらず、祭祀のために飼われたのが最初のようです。 
(ちなみに“卵”も古事記には出てきますが、“雁”の卵。 おしい!)

そして、僕の仕事、“食”の観点、つまり

食材として>という点から考えると、

これはダントツで「たまごが先」・・・!

なんですねー。

 

◆食べるためじゃなかったニワトリさん
ニワトリさんはもともと、

たまごを産んでもらうのが目的」で飼われていたんです。

食材として卵が注目されたのは古く、

紀元前の古代ローマでも卵料理が広く食べられていました。

対して、鶏肉を食べたのは、たまごを産まなくなった後のニワトリさんのみ。

当然老いてますし、あんまり美味しくなかったようです。

食肉用として飼うには、

ウシや豚・ヤギと比べて内臓が多く腐りやすいため、不便だったんです。

庶民の味方、おいしい「若どりの鶏肉」が広く食べられるようになったのは、なんと19世紀以降。

冷蔵技術が発達するまで量産されませんでした。

卵の広まりとは、じつに2000年以上の開きがあるんですねー。

以上、「卵が先か鶏が先か」の大激論をご紹介しました。

何はともあれ、

どちらも美味しく食べられる現代に感謝!ですね^^

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(参照:wikipedia)(ニワトリ愛を独り占めにした鳥・光文社) 

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2016年09月20日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

熊本地震、大変なことになっていますね。

被害にあわれた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、余震が続く中、これ以上の被害が無き事を祈るばかりです。

我々もできることがあれば、と考えております。

3県19万戸におよぶ停電が発生しておりますが、被害が少ない地域であっても大変なご苦労をされておられるかと思います。

たまごに関してですが、停電によって常温保存状態になったとしても、ある程度であれば、食べることに問題はありません。

もちろん生鮮食品ですので、原則として冷蔵保存をすることが望ましいのですが、生肉や鮮魚のように、いきなり食べられなくなるわけではありません。

あくまで期間が変わるだけです。

イギリスのハンフリー博士の研究に基づく、鶏卵日付表示等検討委員会が作成した「鶏卵の日付等表示マニュアル」に記載されていた”生食期限の算出例”を考えると、20℃保存で30日、25℃保存で21日の期間、生食ができます。(※1)

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熊本県付近の本日気温は21℃。 基本的には室温での保存状態が数週間続いたとしても十分食べることは可能です。(あっては困りますが・・)(※2)

 

◆昔は保存食だった卵
ジブリ映画「火垂るの墓」では、空襲の前に地面に埋めた卵をしばらくして取り出す、というシーンがあります。

 昔においては、たまごの位置づけは「保存食」でもあったんですね。

あっては困りますが、もし食料の流通が不十分な地域がでるようでしたら、『しばらくの間停電となってしまっていても、たまごは食べることが可能』、ということを記憶にとどめていただければ幸いです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(※1:賞味期限表示方法としては現在は産卵21日以内を記載するという業界基準に変わっております。上記のデータとは異なっておりますので、あくまで指標とお考えください。ちなみにウチの場合は出荷日から15日が基準です^^)

(※2:ただし、黄味と白身のあいだで水分交換がおこるなどして食感が変わっていきますので、美味しさは落ちます。あくまで生食「可能」ということです。また、ひび割れなどがあるとすぐ腐りますので、注意が必要です。)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2016年04月16日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

北原白秋の「水郷柳河」という小説に、『青い股引をつけた櫨(はじ)の実取りの男が 静かに暮れてゆく卵いろの梢を眺めては無言で手を動かしている』

という一文がありました。

“卵色の梢”ってナンでしょう・・・・・・!?

梢は木の枝の先っちょです。

“卵色”とは、江戸時代からある伝統的な色のこと。

卵の黄身を表わした色とされます。

ですから、『静かに暮れてゆく卵色の梢』とは、夕日がかげり、まるで卵の淡い黄味のようにうっすらと赤く染まっていく様子を表わしたものなんですね。

うーん、ステキな表現だなァ^^

ちなみにこの『卵色』、カラーの定義ではこんな色ですね↓

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アレ?黄身の色」って言うわりにはなんだか薄くってあまり黄色くないし、チョットちがうんじゃないの??

と思われた方、そのとおりです。

それは、ニワトリさんが食べている飼料が、今と違うから。

たまごの黄身は、食べた飼料の色によって左右されます。

トウモロコシなどの黄色い飼料を食べると、黄身はより黄色くなり、ニンジンやパプリカなどの赤っぽい飼料を食べるとより赤味が強くなります。

ちなみに“水溶性の栄養色素”を食べても黄身の色は変わりませんので、たとえば緑の水溶性色素である「クロロフィル」を含むホウレン草やキャベツを食べても『たまごの黄身がになっちゃった!』なんてことは起こりません。

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トウモロコシが日本に入ったのは室町時代後期ですが、本格的に普及したのは明治になってから。

江戸時代には米や麦・あわ・きびなど、いわゆる“五穀”中心の飼料で育てましたから、こういったちょっと淡い色の黄身になっていたんですねー。

ぜひ淡い夕日に照らされた街並みを見られた際には、「これが卵色かー・・・。」と風情を楽しんでくださいましたら幸いです。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2016年04月4日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

暖かくなってきましたね!いよいよ春ですね。食材の保存が気になる時期になってまいります。

よく「卵はとがった方を下にした方が、保存性が良い」と言われますが、コレ実は迷信なんですねー。

この“俗説”の理由として語られているのは、

「卵の丸い方には気室といわれる空気の部分があって、そこを上にしないと黄身が沈み込んだ時にその部分に近づいてしまい、雑菌が入りやすくなるから」

「卵の丸い方にある“気室”から呼吸をしているので、そこが上にしないとダメ」

などと言われます。

実際のところ、どうかというと・・・・・・

すこし古い研究ですが、実際にとがった方が上、下、横向きの卵70個ずつで比較試験をした論文がありまして、これによると

『どちらを上にしても、保存性は変わらない』

という結果が出ています。(※1)

“気室”といわれる空気部分が片方だけにあるのは事実ですが、菌のリスクとは関係無いというワケですね。

じゃあ、なぜ『尖った方を下にすべき』と言われるようになったのでしょうか・・・・・・?

◆輸送しやすいから、そうなっている◆
実は、スーパーさんで売られている卵パック。 これは、全て「尖った方が下」になっています。

なぜかと言うと、『その方が安定する』から。

↑図の通り、曲率の低い(とがっている)面が下の方が、容器のカベ(クッション)に触れる部分が増えるためゴトゴト揺れずに安定します。

また、重心が変わります。

尖った方を下に入れると、より深く容器に入りますので、パックの重心が低くなって、並べた時に、より安定することになります。

結論としては、

・輸送のため、尖った方を下にして卵を包装している

・保存性は、どっちが上下でも変わらない。

というワケです。

ご家庭の冷蔵庫では、どっちを上に向けるかなんてあまり気にせずに、たまごライフをエンジョイくださいませー♪

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(※1 今井忠平“鶏の研究” 1969

(参照:改訂増補たまごの知識 幸書房)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2016年03月4日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

ちょっと信じられないかもしれませんが、実はたまごはアレひとつがまるごと、一個の細胞なんです。

「たまご」として大きなものは鳥類以外ほぼ存在しませんので、鶏卵やダチョウ卵は“地球最大クラスの一細胞”であるわけです。

なんだか不思議ですねー。

 

◆痛風にならない!? 卵のすごい秘密◆
ちなみに、でっかい細胞である事のメリットがひとつだけあります。 それは“痛風”に関して。

痛風の原因となる『プリン体』は、どの生物でも細胞一個”ごとに同じ量が含まれます。 なので、たくさんの細胞からできている「お肉」や「魚介類」などはプリン体が多く、

反面、卵はまるごと一個の細胞ですから、圧倒的にプリン体の量が少ないわけです。

たとえばマグロ100g中には157mgのプリン体が含まれますが、卵100gあたりのプリン体はなんと0.0mg。検出限界以下です。

無い、と言っても良いほどです。

でっかい細胞である卵の中身、大部分は栄養分。

プリン体が無いかわりに、

細胞が分裂していって生命となるための大切な素材がたっぷり詰まっているんですねー。

良いことづくめ!です^^

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2015年08月11日