『鶏は朝』という伝説 その②【中国・パワー王様編】
こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
『ニワトリが鳴いたら朝だよ』
がキーワードな物語って
世界中にあります。
今回は中国のお話しをご紹介。
周の仙王さんがあるとき王妃と約束をしました。
「オレは一晩で
百の井戸を掘る。
お前は百反の絹を織れ。」
その夜、夜明け前に
王妃は百反の絹を織りあげました。
「やったわ!」
「合図を出そうかしら。
そうね、鶏のまねしよっと。」
・・・と、
鶏鳴の鳴きまねをしたところ・・・
周囲の鶏がみなそれに和して
いっせいに鳴いたため、
井戸を掘っていた仙王は
「ええ!?
夜が明けたか・・・。」
ガクッ・・・!
と、99個の井戸を掘った時点で
止めちゃったのです。
これが、
今に残る“江西九十九井”の由来なんだとか。
・・・というお話し。
以前ドイツの「城壁を一晩で作る悪魔」
のお話しをご紹介しましたが、
「鶏の鳴き声で勘違いする」
「完成直前で断念し負けを認める」
という点はまったく同じですね。
なんでしょうね?
王様と王妃様は、
なんでそんなムチャ勝負を
はじめたんでしょうか!?
なんとなく
体育会系で脳筋な
イメージの王様な気がします。
ただ、
この物語でスゴイのは
むしろ奥様のほうですよね。
ちなみに百の織物というと
「董永与織女」という
中国版七夕ストーリーが
有名なんですが、
こちらは身分を隠した天女が
10日間で百の反物を織って夫を助ける、
というお話しです。
仙王の王妃さんは十日じゃなく
一晩で100反ですから
天の『織り姫』より
10倍速いわけです。とんでもないですね!
いわば
古代のパワーカップルでしょうか。
このお話しが載っている
「大清一統志」は、
300年前に国家事業で編纂された
“中国の歴史地理総まとめ大百科”で
360巻もあります。
日本の地図の根拠にもなっているためか、
なんと内閣府の国立公文書館アーカイブで
ぜんぶダウンロードできます。
このお話の国、「周」は
3千年ほど前にはじまった王朝ですが、
そんな昔から
たくさんのニワトリが
人の住まい近くで飼われていた
というのが興味深いですね~。
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。
(参照:ものと人間の文化史「鶏」山口健児著)
(参照:大清一統志)