小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記SOMMELIER DIALY

『鶏は朝』という伝説 その③【日本・デイダラボッチ編】

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

『ニワトリが鳴いたら朝だよ』

が重要なキーになる物語が
世界中にあります。

今回は日本のお話し。


 

ダイダラボッチという巨人がいました。

富士山を見て

「めっちゃ美しいじゃないか。」

「こんな山があるなんて
羨ましい!」

・・と、思ったのです。

 

もっと美しい山、
もっと高い山を
一晩でつくってやるぞ!

と決意しまして、
すごい量の土を掘りだして
積み上げていきました。

 

ですが・・・

まだ作り途中で

夜明けになって
ニワトリが鳴いたのです。

その鳴き声を聞いた
ダイダラボッチ、

うう~・・・!

残念だが、
あきらめよう・・!

と最後の土を放り出して
逃げ出しました。

 

その作りかけの山が
榛名山で

あわてて放り出した土が
ひともっこ山

悔しくて泣いた涙が
榛名湖になったとさ

・・・というお話し。


以前にご紹介した
ドイツや中国の物語、
一晩で壁井戸をつくる伝説と
プロットが似てますね~。

・一晩で作ろうとする

・あと一工程で完成目前

・ニワトリが鳴いて断念

という点が同じです。

 

同じなんですが
日本の伝説版は

スケールが
めっちゃデカい
ですね!

 

なんでしょうね?
こんな大規模工事でも
『一晩』じゃないとダメなんですね。

 

超常なる力の行使は
一晩だけ

鶏が鳴く=朝まで

というのが
世界共通の認識のようです。

 

このお話しが載っている

「ものと人間の文化史49 鶏」によると、
日本の伝説には

大規模工事を一晩で始め
ニワトリが鳴いたから
もうちょっとで断念した

というお話が他にいくつもあります。

 

たとえば冨士山と
あまのじゃく。

『アマノジャク』
という巨人が
一晩で美しい冨士山を
くずしてやろう!!

・・・と考えました。

山の土を海へどんどん
放り投げまくります。

 

ですが、

富士山があまりにでっかすぎ

一部しか崩せないうちに
夜明けになり

ニワトリがあちこちで
鳴き始めた。

アマノジャクは
ニワトリの鳴き声を聞き
運びかけの土を放り投げて退散、

その土は
箱根山の「二子山」になり、

海へ捨てた土は
「伊豆の大島」になったとさ。

・・・という伝説。

 

ちなみに
最後の『ひと捨て』でできた山
ダイダラボッチ版「ひともっこ山」は
高さ1,140メートル、

アマノジャク版「箱根二子山」は
高さ1,099メートルですので

奇しくも
最後に捨てた土の量は
ほぼ同じくらいのよう。

 

スケール大きいなりに
なんとなく規格が決まっているようで
面白いです。

 

日本の伝説の巨人たち
“一作業工程”は
『やま1,100m分の土』。

 

名作漫画『進撃の巨人』には
岩を投げる巨人がでてきますが、
いったいどれくらいだったんでしょうね!?

 

◆鶏の声は魔を打ち払う説も

「朝がきた!」

きっかけとして
ニワトリの鳴き声が登場しますが、

じっさいは
正確な夜明け時間の知らせ

と別に、

ニワトリは
聖なる声で邪を払う

という思想があります。

古代ギリシャでは
ニワトリは「魔除け」でしたし、

中国や古代インドでも聖なるものでした。

 

日本でもニワトリは
『神の使い』として
神社と深いつながりが
あります。

そう考えると、
朝に魔が退散するのは

天変地異の被害から
あと一歩のところを
助けてくれる存在

としてニワトリを見ることも
できますね。

 

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

(参照:ものと人間の文化史「鶏」山口健児著)

(関連:うさぎとニワトリは神社つながり | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学2024年11月7日