清少納言も食べたって!?平安のおもち玉子サンド
洋菓子店のみなさま
クリスマス大変おつかれさまです。
そして飲食店のみなさま、
年末へ向けて更なるお忙しさかと思います。
こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
今年もあと一週間ほど
どんな正月になるでしょうね!
スタッフのYさんから
おもちをいただきまして、
できたてを食べながら、
正月のお雑煮もたのしみに想像してます。
さて、お餅といえば、
おもしろい卵料理があります。
「餅餤(べいだん)」
と言いまして、一言でいうと
おモチのたまごサンド
たまごと野菜を煮て、
それをおモチで挟んで
四角く切ったものです。
これ、千年前の平安時代から続く
由緒正しい料理なんですね。
今年は平安ブームでしたが、
清少納言の「枕草子」に
この「べいだん」が出てきます。
『~白き色紙に包みて、松の花のいみじく咲きたるにつけて持て来たり、ゑにやあらむと、いそぎ取り入れて見れば、餅餤といふ物を、二つならべて包みたるなりけり、添へたる立て文に、解文のやうに書きて
進上
餅餤一包
例によりて進上如件
少納言殿に』
となってまして、
『~白い色紙に包んで、梅の花がステキに咲いた枝に付けて持ってきたものが、これもしかして絵じゃないかしらと急いで受け取ってみると、餅餤(へいたん)という餅が二つ包まれていました。
添えてある立文は以下のような形式でした。』
“進呈
餅餤ひとつつみ
習わしによってこんな風に献上します
少納言殿へ”
という内容が描かれていました。
文学仲間の藤原行成さんからの
ちょっとステキな贈り物だったようです。
◆昇進式のプレゼントだった
ちなみにこの『お餅たまごサンド』
餅餃(べいだん)は、
特別感のあるごちそう
でして、
特別なシチュエーションでのギフトでもありました。
この頃毎年2月に定考(こうじょう)という
表彰式がありまして、
帝に仕える官吏の中から、
とくに芸能に秀でたものを選んで
官位を与える昇進の儀式でした。
そこで公卿諸臣に供された餅が
この、たまごサンドモチ“餅餃”だったのですね~。
当時の先進国・中国から来たお菓子なので
おしゃれ感も強かったっぽいですね。
ゴディバのチョコギフト
ゴールドコレクションをもらった、
みたいなイメージでしょうか。
なかなか興味深いです。
ちなみに紫式部が行成さんから
もらった際は
「こんなステキなものもらって
なんて返信しようかしら・・。」
と悩んで天皇の奥様(中宮様)とも
ワイワイ話しあって
「餅餃(へいたん)を直接じゃなく
使いにもってこさせるなんて
冷淡(れいたん)ですわね♪」
なんて返答を書いています。かけ言葉ですね。
すると行成さん本人がすぐにやってきて
「教養を鼻にかける女性って
すぐ和歌で返信したがるのに、
しゃれた文章で返すなんてやるなぁ。」
なんて感心して、
その後同僚に話したところ
貴族の間で評判になったそう。
◆旧暦2月はたまごのベストシーズン
ちなみにこのお話し、
旧暦の2月は
今の4月上旬くらい。
もともと平安の頃は、
鶏は毎日たまごを産んでいませんでした。
ツバメやすずめなどと同じく、
4月~7月ごろだけ
たまごを産んでいたんです。
鴨やあひるの卵も同じ。
卵は『季節もの』
春だけのレアなご馳走食材
だったのですね。
ですので『たまご料理』って
この時期最高の旬の料理といえます。
(花卵 『万宝料理秘密箱 卵百珍』 | 江戸料理レシピデータセット)
◆『春の旬たまご料理』の切り口はアリ
年中産んでくれるようになったいまでも
鶏卵の質は春が良く、
ニワトリのコンディションも最高です。
「春は旬なたまご料理」
の切り口でメニューに入れるのは
とてもおススメです!
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。
(参照:「枕草子」133段・平安朝の食文化考/帯広大谷短期大学紀要第39号2002年3月)