こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
以前、グリム童話に出てくる「熱々のたまご」をご紹介しましたが、別のグリム童話・卵のお話をご紹介。今度はアツアツどころか肝が冷え冷え、ちょっと怖いお話です。
「フィッチャーの鳥」と言いうお話。
あるところに3人姉妹が住んでいました。
その付近では若い娘の行方不明が続いており、もっぱらの話題となっていました。
ある日、物乞いに変装した魔法使いが長女をさらい、暗い森の中の豪邸に連れ去ったのです。
魔法使いは娘に欲しいものは何でも与え、「君はしあわせだよねェェ。望むものなんでもあるんだから。」とささやく。
2,3日して、
「ボクはちょっと旅に出てくるね。留守中どの部屋も好きに使ってイイけど、隅にある一部屋、ここだけは入っちゃダメだよ……!この小さい鍵で開くけども、ゼッタイ開けちゃダメだよォ…。」
そして、
娘に鍵と卵を一個わたしました。
「この卵を大事にだいじに持っていてねェ。いつも肌身離さずもっていること。汚さないように。割らないように大切に。」
と言い残して出かけてしまいました。
しかし‥‥‥
好奇心に負けた長女は、その開かずの間を開けてしまいます。
中をのぞくと‥‥‥
部屋には大きな斧、
そして
大きなタライが部屋の真ん中に。
見ると中は血みどろ、バラバラになった沢山の死体が‥‥‥!
あまりに驚いた長女は、卵をタライに落としてしまいます。
あわてて卵を取り出し、カギをしめ知らんフリをしていましたが、なんと…!卵に付いた血の染みがどうしても取れません!
帰ってきた魔法使いが卵を見て‥‥‥
「あの部屋を見たなァァ。」
‥‥‥
さて、三姉妹の家では、長女に続き次女まで行方不明になってしまいます。
攫われ部屋を見て同じく卵を汚してしまい、次女も同じ目に‥‥‥
そして、姉たち2人の身を案じる末娘まで、ついには魔法使いに攫われてしまいます‥‥‥!
同じく森の豪邸で卵と共に一人留守番をさせられた末娘。
やはり気になって、部屋を開けてしまいます。
部屋のタライには、古い死体と共に、姉2人のバラバラ死体が‥‥‥!
が、姉2人とちがって末娘は卵を持ち歩かず、ちゃんとしまってあったのですね。
なので、卵を血で汚すことなく対処ができたのです。
まず、二人の姉の体をきちんと並べ、生き返らせます。
「ああ良かった……!なんとか姉さんたちを逃がすから、家に着いたらすぐ助けを連れてきて!」
と、姉二人を金貨の入った箱に隠れさせます。
帰ってきた魔法使いは、
「ウンウン、君は部屋をのぞかなかったねェ。汚れのないキレイな卵だァ。試験は合格だァァ。キミと結婚しようゥ。」
「わかったわ。じゃあ、結婚の持参金をワタシの実家に持って行ってね。」
「もちろんだよォ。」
と、姉二人の入った金貨の箱を背負っていきました。
その間に、末娘は魔法使いの知人たちに結婚式の招待状を送ります。
それから、残っていたガイコツに飾り付けをして花束を持たせ、屋根裏部屋の窓から見えるように並べました。
さて‥‥‥
全ての準備が終わった末娘は、
蜂蜜の樽に入り、
羽根布団を割いてその中で転がりました。
羽毛が全身にくっついて、一見大きな鳥みたい。
それから、堂々と家から出て行きました。
途中、結婚式に向かうお客にすれ違います。
「鳥さん、どこから来たんだい?」
「近所のフィッチャーさんの家からよ。」
帰ってきた魔法使いにもすれ違います。
「あァ鳥さん、ウチの若い嫁さんは何をしているかなァ?」
「きれいに掃除をして、窓からご覧になっているわよ。ほら。」
…と飾ったガイコツを指さします。
そして‥‥‥
家に入った招待客と魔法使いを、
助けに来た家族の協力で、誰も逃げられないように閉じ込め、火を付けました。
魔法使いと仲間たちは焼け死んでしまいました。
めでたしめでたし……なのかなぁ??
「童話」なのに、ところどころ相当グロイですね。
カンタンに生き返っちゃうのは昔話っぽいですが、
それ以外の、例えば開かずの部屋に入るシーンなんかはホラー映画顔負けのストーリー建てで臨場感あります。
ちなみになぜ卵を持たせるのか?なぜ卵を汚さなければOKなのか?という点ですが、これは女性の「清純さの象徴」が真っ白な卵なんだそうです。
欧州の「卵は聖なるもの」というイメージも影響しているのかもしれません。
〇残酷なのはOK!?グリム童話
グリム童話は、子供ウケや世情の変化を意識して7回の改訂がされています。
その都度、たくさんのシーンやお話が取捨選択されているんです。
性的な部分がカットされたり、「実母の虐待」だった“白雪姫”や“ヘンゼルとグレーテル”などのお話は「継母」に変えられたり‥‥‥
でも、残酷シーンについては全然寛容で、シンデレラなんか逆に継姉への復讐シーンが改訂後に追加されたくらい。
この「フィッチャーの鳥」のお話も第7版までしっかり残っています。
こばやしは卵をチェックするときに、時々このお話を思い出します。
「そもそも卵がキレイじゃないとお話が成立しないよなぁ。」
ぼくも商売柄たまごは大事にあつかいますので、多分同じ目にあったときは卵を持ち歩かずに大事にしまっておくかと思います、その時は生き残れるかもしれません(笑)
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。
(関連:グリム童話の熱いたまご―たまごのソムリエ面白コラム)