こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
一攫千金、
カリフォルニアにある“金脈”を目指して荒くれ者が詰めかけ、
時には争い、銃撃戦…
こんな古きアメリカ西部の騒ぎを
「ゴールドラッシュ」と呼びます。
実は同じ頃に、
一攫千金、“絶品美味しい卵数十万個”をめぐって
荒くれものが押し寄せ、奪い合い、
銃撃戦を繰り広げた
言うなれば
「エッグラッシュ」
があったのをご存知でしょうか?
本日は、その名も
『エッグウォー(卵戦争) 』
と呼ばれる、有名な事件について。
◆カリフォルニア沖に浮かぶ「宝島」…!?
時は1800年代中頃
場所は米国の西部
サンフランシスコの沖にある島、ファラロン島が舞台です。
この島、
実はめっちゃカモメやウミガラスがいる楽園の島で、
アラスカとハワイをのぞく全米最大の「海鳥の営巣地」。
カリフォルニア州がメキシコから米国に移譲されてすぐ1849年
「ロビンソン博士」なる人物が
この島の「宝」を発見したんです。
宝とはすなわち「海鳥のたまご」です。
海鳥、特にウミガラスのたまごは味が濃くってメッチャ美味い。
そして生産量がスゴイ。
年間に産まれる卵の数は、50万個以上!
「こりゃすごいぞ。」
…ということで、
すぐに海鳥の卵を売る会社、
その名も「エッグカンパニー」を設立します。
当時の「卵」は高級食材、しかも西部は人口増で常に食料不足でした。
とにかく儲かりますから、
島を調査して建物・道路・船着き場を次々に建設、
ようするに完全にわが物としちゃったんですね。
上の写真は、実際の収穫の様子。
真ん中に山になっているのが、ウミガラスの卵です。
鶏卵よりはやや大き目ですねー。
毎年5月から7月の間、
「エッグピッカー」と呼ばれる「卵集め人」達が島中から卵を集め、
毎日サンフランシスコへ船で運びました。
5月初上陸の時は、その日のうちに巣のたまごをぜんぶ破壊し、
次の日から卵があれば、これは新鮮!と判別したそうです。
ちょっとカワイソウですねェ…。
◆ワルが集まってくる・・・!
さて、
とにかく大儲けだったことから、
当然のごとく儲けを狙うライバルが多数出てきます。
「俺たちにも捕らせろよ・・・!」
ってことですね。
島の領有権は「エッグカンパニー」が持っていましたから、
最初は周辺の小島を狙って捕りに来ていましたが、
ほどなく次々と本島へ乗り込んでくるように…。
もちろんトラブルになります。
ただ、そもそもこの島はあちこちに岩礁がある船の難所、
連邦政府が灯台を建てたことでようやく自由な行き来ができるようになったところです。
ですから、島は政府の保安管理下でもあったことから、最低限の治安は保たれていました。
◆国の目をかいくぐって戦争に…!
1863年のこと、
ライバル会社のデイビッド・バチェルダー率いる仲間が島に上陸した所を、島の灯台管理局長が臨検しました。すると、
卵盗み目的だけじゃなくって、多数の武器で武装している・・・!?
保安局長は武器を押収し、彼らを島外へ退去させました。
ところが
バチェルダー一味は、
更に沢山の武器を持ってまた戻ってきたんですね。
目的は、エッグカンパニーを追い出すため。
国の巡視船をかいくぐって、
3隻27名もの武装した部隊が、夜明けとともに島に上陸します。
が、
いち早くエッグカンパニーのスタッフが侵入に気づき、
すぐさまこれに応戦、島の海岸は、
あっというまに数十人が銃を手に撃ち合う、戦場と化しました。
島を知り尽くした「守る側」が有利だったのか、
20分の激しい戦闘ののち、
双方死者1名、上陸したバチェルダー一味が多数のケガ人を出し
撤退することで、決着となりました。
いやー、
卵を巡って数十人のガンマンが撃ち合い…
なんともスゴイ話です。
突然やってきたならず者を撃退するなんて、
「卵集め人」の皆さんもかなりのスゴ腕だったのでしょうか!?
◆たまごバトルは美味だから・・・!?
「世界一高いオムレツ」を提供する英国のレストラン「Boisdale」のシェフは、同じ海鳥である黒頭カモメのたまごを、「美味!まるで宝石だ。」と評しています。
ウミガラスの卵も、
栄養源となるだけでなく荒くれものにとって「砂金」と同じくらい価値のある、
極上の味だったのかもしれません。
けっきょく
バチェルダーは殺人罪で逮捕
「エッグカンパニー」はその後20年に渡り島の集卵を独占しますが、
その後連邦政府に島の権利を売却、命令により退去となりました。
それは、
鶏卵の飼育増産方式が確立され、食料不足が解消されたこと、
そして何より
数十万羽いたウミガラスがわずか約6千羽まで減少してしまったことがその理由です。
150年経った今、
再び数十万羽のウミガラスとアザラシが住む、平和な楽園となっています。
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。