「温泉玉子」には2種類ある【進化する温玉の歴史】
こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
少し前に番組で
『温泉玉子の簡単な作り方』
をご紹介した際に、
「温泉玉子って
黄身も白身も半熟じゃないのでしょうか。
黄身が生っぽいのは温泉玉子なの?」
というご質問をいただきました。
そう、
じつはこれその通りで、
温泉玉子って
とても悩ましい、
そして興味深いことに
なっているんです。
じつは、
いま流通している
温泉玉子は、
広義で2種類のものが
あります。
①黄身がしっかり固化した
本来の温泉玉子
②黄身がトロトロで
比較的流動性が高い温泉玉子
本来の『温泉玉子』の意味合い
としては、
①の「黄身しっかり」を指していました。
(番組の際はアレンジのしやすさを
考慮して②調理法の紹介になってました)
2種類の温泉玉子が
普及することになったのは
実はこんな流れが・・・
◆まず黄身しっかりの温泉玉子が普及
そもそも“温泉玉子”って
比較的新しい調理法なんです。
適温の湯泉を持つ温泉など
ごく一部の地域で食される以外は、
昭和中期になるまで
ほぼ普及していませんでした。
プラスマイナス5℃での正確な加熱保温が
求められる料理ですので、
『微妙な温度調整』ができる
“ガス機器と温度計”の普及が
必須だったためです。
薪じゃムリなんですね~。
また、
生食に近いためか
温泉玉子は海外では
ほぼ普及しませんでした。
そのため、
ダシと合わせて
それだけを食べる
「温泉玉子=和食」
として
昭和に普及していくことと
なったのです。
◆飲食店中心に『新』温泉玉子が普及
つぎに②の、
『黄身がより生に近い温泉玉子』は
下記のような経緯と考えられます。
西洋料理に
「ビスマルク風」
というものあります。
これは
『目玉焼き』を
いろんな料理に
トッピングしたもの
でして、
アレンジがしやすいことから
広く欧米で普及しています。
ビスマルク風の目玉焼きは
より黄身が半熟トロトロの
ものが好まれまして、
日本でも
ハンバーグなど焼き物や
ピザ等で人気となっています。
この「ビスマルク風」が
日本の飲食店で
温泉玉子にシフトしていったと
考えられます。
◆ビスマルク風(目玉焼きのせ)から温玉トッピングへ
これは、
・生食好きな日本人の口に
半熟目玉焼より温玉(トロトロ風)
がより好まれた事、
・焼く目玉焼きより
割るだけの温玉のほうが
飲食店オペレーションが簡易なこと、
・油を使わないため
目玉焼きよりもヘルシー感があること
などが、
飲食店メニューで温泉玉子が
取り入れられた理由です。
また、
従来の黄身しっとり固まった
温泉玉子より、
黄身とろとろ温玉の方が
サラダなどでも
ソースのように絡めやすくて、
『トッピング』として見ると
メリットが大きいんですね。
これも飲食店中心で好まれた理由のひとつ。
さらに、
鶏卵加工メーカーも
「黄身トロトロ」の温泉玉子を
多く製造販売するようになりまして、
スーパーさんなど一般小売にも
広まってきたのです。
こんな理由で、2種類の温泉玉子が
世に普及しているのです。
◆さらに進化していく・・・!?
そして、
温泉玉子はいま
海外で受け入れられつつあります。
この数年でも
海外の星付きレストラン中心に
「新しい卵調理方法」として
脚光が当たっています。
今までになかった
合わせ方、食べ方も出てくるでしょう。
さらに面白い温玉アレンジや
食感バージョンが好まれて
くるかもしれません。
「生ギリギリの温玉」
「ゆでたまごギリギリ温玉」
とか!?
ワクワクしますね。
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。