意外と気づいてない卵の事
こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
10年ほど前のある日のこと
会社に一本の電話がかかってきました。
内容はクレームです。
とにかくすごい剣幕で、お怒りの様子。
すわ大ごとか!?と・・・お話を聴いてみると、
「おたくは詐欺だ!」
「白たまごに赤いペンキを塗って、高く売っている。客をだますのか!」
…との事でした。
もちろんそんな??ことはしませんので、
とにかく誤解を解こうと、
どうしてそう思われたのかを尋ねました。
すると、
「家内が買った赤卵のカラを金属タワシでこすったら、赤色がハゲて白くなった!色を塗ってるからだ…!この詐欺師め!」
との事。
思いもしなかった抗議内容に言葉を失ったのですが・・・
〇卵殻の色はなぜ付いている…!?
そもそも赤卵って、なんで赤いんでしょう?
これ、「擬態」の色なんです。
自然の中で、我が子である卵を捕食する敵から守るための色です。
ですから、ワラや土の上で巣をつくるニワトリさんの卵は、もともと全て赤茶色でした。
草原に住む鳥・エミューの卵のカラは真っ青ですし、葉の生い茂る木の上で巣をつくるカラスやこまどりの卵は緑青色です。(ちなみに白いカラの鶏卵は、人間に品種改良されてから)
でも……どの鳥も、
どの卵のカラも、その内側は真っ白なんです。
卵殻の主成分は炭酸カルシウムです。チョークの粉と同じ成分ですね。すなわち白色。
そして内側まで擬態する必要は無いですから、色は付いてないんです。
たまごは実は表面だけに色が付いている、それもほんの数マイクロミリの厚さのみ色素が入っています。
ちょっと硬いものでこすってやると、削れて下の白地が現れるのです。
赤卵カラの内側は真っ白
このことを人にお話すると、
「初めて気づいた!」
という方が意外と多くいらっしゃいます。
あまりに日常過ぎて、
そして普段は卵の中身に用があるわけですから、
まじまじと卵のカラを観察することってあまり無いのかもしれません。
前述のクレームのお電話を頂いたお客様には、
「たまごの殻の赤色はそもそも表面にごく薄くあるだけ」
「どこで買った赤たまごも同じ。金属たわしで削ればそうなる。」
…という事を
ご訪問のうえ目の前でご覧いただき、理解して頂きました(汗)
〇誰かの「あたりまえ」と信頼の大切さ
あまり知らない世界の事って、なんだか疑心暗鬼になりやすいですよね。
ときどきネットやTVで“陰謀論”を目にするたびに、このクレームを思い出すんです。
芸能人の麻薬逮捕は目を逸らすための政府の陰謀だ!
給食のパンは小麦で世界支配をたくらむGHQの陰謀だ!……
なんて話も聞きますが、もしかすると業界の人なら「いや、それって変な事じゃないよ(汗)」って言いたくなる事なのかもしれません。
例えば卵のカラなら、
「そもそも……一個ずつ色を塗っていく方がコストも手間も大変だよな。するわけないか。」
と落ち着いて考えてもらえたなら、誤解でご立腹いただくことも無いわけです。
よく知らないからこそ、悪いイメージにつなげてしまう。
ですので、
普段から「小林さんのところなら間違いないよ。」と思ってもらえる信頼づくり、また自分が知らない業界の事は一歩立ち止まって考えてみないといけないなぁ、と感じております。
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。