得意先さん、特に洋菓子屋さんとお話していると、「たまごの香り」の話がよく出てきます。甘ーいたまごの香りのロールケーキ、おいしいですよね。
今回はこの「香り」についてお話します。
◆—洋菓子のプロが欲しいたまごは・・?
さて、洋菓子店さんで聞き取りをし、色んなご意見を頂くと、「魚っぽい香りが無いこと」に対するニーズがかなり強いことがわかります。この香りの主成分、トリメチルアミン系物質(*1)は、ケーキや洋菓子にとって強いマイナス要素になります。「臭みの無いたまご」が重要なんですね。
なので、いろんな取り組みでここにトライしたものが、弊社の「ケーキ・洋菓子専用たまご」になります。植物性の飼料、ハーブなどを組み合わせた飼料、吉野川流域の汲み上げ地下水。そして自然に近く快適な飼育環境。これらの試行錯誤により、何度も洋菓子店さんからダメだしをいただきながら、作り上げたものです。爽やかで甘くほのかな香りが特徴の、おいしいたまごができました。
◆—和食に最高のたまごは・・?
さて、ではこの「臭みがない」という特徴、どんな料理にでも言えるでしょうか?よく「この卵は臭みが無い!すごいよ。」という話を聞きます。これが「良いたまごの指標」となっているイメージがありますね。でも本当にそうだろうか・・?
数十種の卵にて、何度も試食試験を繰り返した結果、確かに上記の洋菓子やゆでたまごには、香りのクセの少ない卵が向いているということがわかりました。ですが、醤油や鰹ダシなどをつかう和食で考えると、ある程度特徴のある香りの方が、相乗効果が出てより「おいしい!」という評価がでることも、その一方でわかりました。
上記のアミン系の香り(やや魚っぽい香り)も、洋菓子ではマイナスとなっても、料理のよっては鰹ダシや醤油と合わさることにより、より複雑で濃厚な食欲をそそるたまごの香りとなって、食べる人の美味しさを何倍にも高めるようです。(*2)
◆—究極のたまごかけご飯に必要な香り
たまごかけご飯の場合は、とにかく生で味わうときの香りが重要になってきます。(1)ご飯の甘味と合う黄身の甘旨味、(2)醤油やダシとの相乗効果の高い香り、(3)ご飯粒と適度に合う白身の食感、この三点が『究極のたまごかけご飯』にとって重要と考えています。
香りの面からも、上記の観点でさまざまな工夫をしてあるので、アツアツのご飯に香ばしい醤油といっしょに食べると、「うまーい!!」の声が思わずでてしまう、一品にしあがったのです。
なんでもかんでも「臭みが無い」のが良いのではなく、香りの面からも、「料理によって使い分け」を考える必要がありますね。
◆おまけ—更に料理によっては・・?
ちなみに中華料理や一部の洋食の試食では、たまごの「香り」による差は出ませんでした(*2)。香辛料や香菜を沢山使う料理では、むしろ卵の香りよりも、他食材に負けない強い旨味や、加熱時に絶妙の食感を引き出すことの方が重要なようです。
(*1)主に飼料の成分である発酵魚粉などに起因すると言われています。
(*2)もちろん、繊細な香りを活かす料理では、「たまごらしい香りが主張しすぎない、香りが少ないこと」が第一条件になる和食料理もあるようです(聴き取りにより)
(*3)卵白のとろみスープなど、香りの繊細な料理では優位差のでた結果も。