小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまご・鶏のことわざ 記事一覧

こんにちは!たまごのソムリエ・小林ゴールドエッグのこばやしです。

本日は卵・鶏さんの慣用句第16弾!

前回に引き続き中国です。

<鶏肋(けいろく)>

鶏さんの肋(あばら)骨は良いダシが出るし、味があってしゃぶると美味しい。 でも食べるほどの肉は無いのでお腹はいっぱいにならない。 なので、たいして役に立たないが、捨てるには惜しいもの」を指すようになりました。

 

◆始まりは三国志から・・・・・・!
これはあの三国志、曹操のエピソードが元なんですね。

三国志演義によると、

劉備玄徳が漢中郡を攻め取り「漢中王」を名乗りました。怒った曹操は漢中郡を奪還するために兵を出します。

が、そこで曹操軍は大苦戦、攻防の中で大敗を喫してしまいます。 曹操は「ここは撤退すべきか・・・。」と考えていましたが、笑いものにされることを恐れて言い出せずにいました。

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ある夜、部下の夏候惇が指示を仰ぎに曹操のもとにやってきます。 陣中で深く考え事をしながら、たまたま鶏のスープを飲んでいた曹操は「鶏肋(けいろく)・・・。」とつぶやきます。

それを聞いた夏候惇は、全軍に「鶏肋だ!」と伝令を飛ばします。 さあ、さっぱり意味が分らない・・・??? 武将たちが混乱する中、側近の楊修だけが、すぐさま「撤退」の準備を整え始めました。

夏候惇はビックリ!

「!?貴殿はなぜ撤退の指示を出してるんだ!?」

楊修「曹操様は、漢中郡鶏の肋(あばら)に例えておられます。 すなわち鶏肋はしゃぶれば美味しくて捨てるのは惜しいけれども、実際は食べる肉の部分は少ない。 漢中郡も手を退くには惜しいけれども、これ以上無理をするだけの利点はないという意味でしょう。なので、私は撤退の指示を出しているのです。」

「なるほど。」

納得した夏候惇は自身も部下に撤退の命令を出し、引き揚げを開始します。

サア、驚いたのは曹操。

「なんの指示も出してないのに、全軍が撤退をはじめている!??」

激怒した曹操によって、楊修サンは「軍の規律を乱した」として、後に処刑されてしまったそうです。

以上、なんとも理不尽なエピソードですが、一説によると、才覚がありすぎる楊修を恐れ排除するために、曹操はこの一件を口実にしたと言われています。

 

◆モッタイナイをどう考えるか?
実際の価値にかかわらず、手間をかけたものを手放したくないと感じてしまう心理を、「サンクスコスト効果」と言います。

株や経営判断、そしてご家庭の服・・・実際に上記の鶏肋(けいろく)状態で判断を誤るケースは多いです。

そんな時に必要なのは、感情の入らない客観的な判断!

「二年タンスから出さなかった服は捨てよう。」

「社外のあの人に聞いてみよう。」

自分の感情と切り離すのがコツなのかもしれませんね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

関連:たまごのソムリエ日記・・・たまご・鶏さんのことわざシリーズ一覧

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2013年10月12日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご、鶏さんのことわざ第15弾、今回は中国から。

<鶏飛蛋打>(けいひたんだ)

鶏には逃げられ卵も割れてしまう、という意味。 あれもこれもと両方を狙って結局は何も得られない喩え。また、踏んだり蹴ったりな状況の喩えでもあります。

二兎を追うもの一兎も得ず」、または「泣き面に蜂」、と言った意味でしょうか。

例えとしてはなかなかウマいですねー。ウサギ(兎)や蜂の“日本式”ことわざよりもずっと「トホホ」感が出てます。

イスラエルの心理学者メラマードさんの研究によると、『迷った時に判断に時間がかかる人ほど不安を抱きやすい』のだそうです。しかもその判断が当たっていたかどうかに関わらずです。

心理学的には、「迷うくらいならさっさと決めてしまった方が人生幸福である。」という結論なわけで、上の「鶏飛蛋打」トホホ状態にならないためには、とにもかくにもコイン裏表でも良いので、いかに早く決断してしまうか!が大事なようです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(参照:かなり面白いですよ!→マンガで分かる心療内科・精神科in渋谷 第66回「優柔不断は危険? サイコロで不安を消す方法」 http://yusb.net/man/791.html)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2013年09月13日

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こんにちは!たまごのソムリエ、小林ゴールドエッグのこばやしです。

たまご、鶏さんのことわざ、第14弾です。今回はドイツから。

<まだ産まれていない卵を気にかけるな>
(Kümmere dich nicht um ungelegte Eier.)

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英語では<孵化してない鶏を数えるな>という諺があります。(“don’t count your chickens before they’re hatched”)

どちらも同じ意味で、ようするに「獲らぬ狸の皮算用」ですね。「飛ぶ鳥の献立」なんていう言い方もあります。

 

◆毎朝生まれるとは限らない
ちなみにニワトリさんは毎日確実に卵を産むわけではありません。卵を産んでくれる確率を“産卵率”と言いますが、若いニワトリさんでだいたい90%くらい、ある程度年を取っちゃったニワトリさんでは70%前後になります。 明日生んでくれるかどうか?はわからない訳です。

そして卵からヒヨコになるのも、残念ながら100%確実ではありません。 状態にもよりますが、だいたい95%から98%くらい。 諺でいうと、ドイツの諺(たまご)より英語の諺(ヒヨコ)の方が、未来に対して厳しい戒めとも言えますね。(^^;)

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そういえば「獲らぬ狸の皮算用」ですが、英語では「獲らぬクマの皮算用」“Catch your bear before you sell its skin.”

という諺もあって、考えることは同じでもスケールの違いを感じますね! (^^;) タヌキくらいなら狩猟の予想も立ちそうですが、クマとなるとホントに獲ってこれるのか、“皮算用”するにも大変そうだなァ。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

関連:たまごのソムリエ日記・・・たまご・鶏さんのことわざシリーズ一覧

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2013年09月2日

こんにちは!たまごのソムリエ、こばやしです。

さて、たまご・鶏のことわざ第13弾、今度は中国です。

<鶏鳴狗盗>(けいめいくとう)

直訳としては、「鶏の鳴きまねをしたり、イヌみたいに物を盗む」となります。

面白いのは、その解釈です。

  1.  小策を弄ろうする人や、くだらない技能をもつ人、つまらないことしかできない人のたとえ。
  2.  つまらないことでも何かの役に立つことがあるたとえ。
                (「新明解四字熟語辞典」(三省堂)より)

……という、ポジティブ・ネガティブ両方の意味があるんですねェ。
なぜでしょう・・・・・・?
コレ、「史記」のエピソードが元になっているんです。
 
◆適材適所の達人!?

斉という国に孟嘗君なる人物がいました。 この方は斉の政治家だったのですが、才能を持つ者を集め、自宅に食客として住まわせていたんですね。 その数、なんと数千人! まァこれだけいると中には「ちょっとモノマネができます。」なんて一発芸レベルの人達もたくさんいて、「なんであんなヤツらまで食わせてやってるのか?」と周囲に不審がられていました。

 

が、孟嘗君が秦の昭王に捕えられちゃったときに、そのピンチを救ったのがこの食客たちだったんですね。 狗(いぬ)みたいな「素早さ名人」が秦の宝物「狐白裘」を取り戻し、王の娘・昭姫にコッソリ献上、その取り成しで釈放してもらいます。 しかしその後追手を差し向けられ、国境の門で追い詰められます。 絶体絶命、そのとき・・・・・・!「鶏の鳴きまね名人」が「コケコッコー!」の名演技、ウッカリ守衛が夜明け前の夜中に国境を開門しちゃったことで、あわやの脱出を図ることができたんですねー。

町の人いわく、「なるほど、人は使いようなんだなぁ。」と孟嘗君の「先見の明」に感心しきりだったそうな。

・・・・・・以上が、「鶏鳴狗盗」の元エピソード。

なので、(1)つまらないことしかできない人のこと   (2)つまらないことでもいつか役に立つ

という二つの意味を持つことになるわけです。

なんにせよ、孟嘗君さんの「人の長所を活かす」という発想は、我々中小企業にとってすごく大切な考え方だと思います。

ところで私は少々整理が苦手でして、「この資料、いつか役に立つかもしれん。」などと思うとなかなか捨てられません。

これって戦国四将の一人と称えられる孟嘗君サンの「いつか役に立つ」思想と共通する・・・・・・・・・と良いなァ。 そう思いながら仕事しています(^^;)

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

 

◆おまけ
ちなみにこの孟嘗君さんは5月5日生まれで、中国の占術によると「門戸の高さに成長した頃に親を殺す」凶運を持つ子として生まれました。 日本だったら、「子供の日」なのに・・・!

が、孟嘗君のお父さんはリッパでした。

「そんなもん、ウチの門戸をめっちゃ高くしとけば問題ないだろ」と周囲の意見を取り合わず、孟嘗君を立派に育て上げたのだとか。 こういう柔軟な発想と価値観が後の立派な大人物を創るんですねー。 為になります。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2013年06月29日

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たまご、ニワトリのことわざ第12弾です。 今回はイギリスから。

<今日卵を一つ持つより、明日めんどりを一羽持つほうがよい> トーマス・フラー

たまごを食べちゃったら、その一個でオシマイなんですね。 もしその卵を孵すと、ニワトリさんは週6個程度、約2年のあいだで600個超のたまごを産みます。 目先の欲に流されずに大事な「資源」を活かす、増やしていく。 そういう努力をすることで、将来大いに報われるわけですねー。

貯金、勉強、運動・・・、いろんな事に当てはまりますね。 今大変な想いをしている受験生の皆さんは、眠たいからって寝ちゃったら良い学校に行けないわけです。(^^;)

日本にも、「米百俵」という有名なエピソードがありますよね。

こちらは、かつて困窮した新潟長岡藩に送られた援助の米百俵を、藩士で分ける事なく売却し、未来の人材を育てる学校設立費用にあてたというお話。 「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」(小林虎三郎)という言葉が有名です。 日本ではおコメ、英国では畜産物になぞらえて言葉が残っているのも、それぞれのお国柄が出ていて興味深いです。

 

◆増やすモノ?使うモノ??
さて話を戻しまして、上記の言葉を残したトーマス・フラーさんという方は、17世紀イギリスの神学者です。 宗教家らしく、沢山の箴言を残しています。

他にも、

結婚前には両目を開き、結婚してからは片目をつむっていることだ

なんて有名な箴言も残しています。

これなんかはクスッと笑いながらも同意される方は多いのではないでしょうか。

日本のたまごは99.9%無精卵なので温めても孵りませんが、お金、時間・・、消費材と思いがちな大切なものをどうやって「増やす」ことに変えていくか、たまごを見るたびにフト思い出してもらえましたら幸いです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2013年01月28日

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たまごのソムリエ、こばやしです。 たまごのことわざ、第11弾です。(^^)

今回は中国のことわざ。

<以卵投石(いらんとうせき)>

卵をもって石に投」、と読みます。 出典は“性悪説”で有名な「荀子」の書です。

卵を投げて石を壊そうとしても、フツーに考えてこれはゼッタイ無理・・。 転じて、「身の程知らずで自滅する」とか、「ムダと判っていながら愚かな行為をす」、そういう意味で使われます。 日本で言うとなんでしょうね? 「焼石に水」「糠に釘」、のようなカンジでしょうか…!?

 

◆たまごと石の対決
「卵と石」の対比は中国では良く使われていまして、

例えば尖閣諸島の問題でちょうど二年前に巡視船が中国漁船を拿捕し、国際問題になった事件がありましたが、その当時の中国版記事を読むと・・・、

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中日友好委「両国関係、風は吹けども動ぜず」-(人民網日本語版) 2010年11月5日 

(前半略) 中国漁船の進行を妨害し追い払おうとし、さらに拿捕(だほ)したこと自体が違法である。「石と卵がけんかしたら、常に石が勝つ」という言い方があるが、今回の事件がまさにそれである。勝ち目のない卵が石にぶつかっていくはずはない。(以下略)
http://j.peopledaily.com.cn/94474/7189987.html
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記事中で、石と卵 の対比が使われています。 これなんかも、上の慣用句が念頭にあってイメージに使われているわけです。 おおもとの意味を考えるならば記事はやや皮肉な表現とも取れますが、少なくともビジュアル的イメージとしてはとても判りやすいのではないでしょうか。

 

◆「卵」 対 「金属」なら・・・!?
ちなみに、卵を加熱したり腐ると出てくる「硫黄ガス」は、金属を腐食させます。 なのでしっかりと対策しないと、食品加工場の加熱ラインなんかは金属がボロボロになっちゃったりします。 石はくだけなくても金属は長い時間をかけて打ち壊しちゃうこともある・・・卵は結構オソロシイ存在でもあります(^^)

反対に、たまごの卵白はものをくっつけるのに使われることもあります。 フィリピンには、「卵白でつなげてできた岩の城」があります。 砕くことはムリでも、逆にくっつけて新たな価値を生んでいく・・・これからの知恵の出し方かもしれませんね。

冒頭のことわざは、裏を返すと自分にできることをハッキリ認識して、強みを発揮できることに最大限取り組んでいくことが大切とも言えるわけです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2012年12月13日