小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

たまご・鶏のことわざ 記事一覧

本日は「たまごのことわざ」と集団の決め事についてお話します。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

パラリンピック始まりましたね!

オリンピックとはまた一風変わった
テクニックや戦いぶりで、
バスケットなど球技が
とくに楽しみです。

 

ところで、
パラリンピックって、
障害の「度合い」で
有利不利が出ますよね。

 

片足の障害がある選手と、
両足の方では制約が違うでしょうし、

 

少しうごかせる
まったくうごかない

 

こんな方同士が競うのも
有利さが出てしまう・・・。
いったいどういう基準でするのか…。

 

調べてみると、
一人ひとりの異なる体調を、
「クラス分け」と「ポイント制」
の独自ルールで公平性を保っているんですね。

へー。

医療など専門知識をもった
「クラシファイヤー」
と呼ばれる判定員さんが
基準にしたがって細かく
判断されるのだとか。

 

義手義足など素材がどんどん向上していて、
近い将来パラリンピックの成績は
オリンピックを抜くだろう

なんても言われています。
こういったクラス分けの判断も、
さらに重要度上がってきそうですね。

 

さて今回のお話は、
この「判断基準」にまつわるたまごの諺


たまごのことわざ第67弾
今回は中国から。

 

<君子たるもの
子鹿や卵を獲らえない>
(君子不麑不卵)

 

立派な人物は親子の情に報いるものだ

という意味です。

こんなエピソードがあります。


あるとき王様が狩りに出かけ、
鹿の子を捕らえました。

 

王様は領主にそれを宮殿に
持ち帰るように命じたのですが、

領主はその道すがら
母鹿がその子鹿に寄り添い
鳴くのを見てかわいそうに思い、
解放してしまったのです。

王様は後でそれを聞き、

「勝手な事をしおって!」

と怒り罪に問おうと思い
領主を捕らえさせましたが、

 

その罪を決めかねて
いったん保留したのです。

さて少し時がたち、
王様は病気にかかりました。

 

「自分も老いた・・・。
何があるか分からんのう。
いざのために息子を託すべき
後見人かつ教育係を決めておかねばな‥‥‥。」

 

ただ、誰にするか…。

そこで思い出したのが
その領主のこと。

 

「よく考えてみると、
あやつは情の深い男だ。

子鹿にすら親の恩を感じたのだ、
人の子にはもっと愛情をもって
接するだろう。」

 

と、彼を釈放し、
息子の教育係に採り立てました。


王様、なんだかずいぶん勝手な気もしますが、
これ何の話かと言いますと、

「儒学」のケーススタディ

なのです。

 

2千2百年くらい前に
董仲舒さんという儒学者がいまして、
この方は「儒学」を『国の学問』に
推し進めた最初の人。

 

この人が、
「儒学って何?」を教える際
さきほどの王様エピソードを語り

 

「どういう対応をすべきだったのか?」

という問いを弟子に投げかけたんです。

 

仲舒さんの答えは

立派な君子たるものが、
子鹿や卵を獲っちゃダメだよ。

 

「母親の愛に気づかって
子鹿を開放するのは、
人としての道理に
かなっているよね。」

 

「でも、命令を守らずに
コッソリ逃がしたのはダメ。

領主は王様をその場で
諫めるべきだった。
これ罰の対象だよね。

死刑はひどすぎるから
強制労働くらいかな?」

 

‥‥‥と、

『情恩に報いる行動』の是非

を説いたというお話。


すなわち

<君子たるもの子鹿や卵を獲らえず>

のことわざとして、
今日まで残っています。

なるほど、明快ですね。
儒教は大まかに言うと、

人としての生き方(仁・義など)
を守って父子、夫婦、目上の人、
年配、友人を大切にしていきましょう

という考え方です。

 

ただし、
高倉健さんが歌った

『義理と人情を 秤にかけりゃ~』

なんて歌詞にあるように、
「人としての生き方」だって
時に矛盾します。

 

じゃあどうすりゃいいの??

をハッキリさせて、
それを学問として体系立てて
いったわけです。

 

その結果、儒学は「国学」として
ずーっと中国で根付いていったのです。

 

現代でもこういうことって
ありますよね~。

 

社長がムチャな命令をしたとき、

「そりゃダメだろう‥‥‥」

と思いながら
社員みんながそのまま従っていては、
大きな失敗につながります。

 

かといって、
勝手に判断して
命令を聞かなかったら、
組織がくずれちゃいますよね?

 

「そんなら、オレが命令した時に
ハッキリ反論してほしいなぁ。
なおすから。」

 

‥‥‥たしかに組織としては、
こんな方がスムーズに回ります。

 

あらかじめ社内教育の場で

「こんなことは会社として
間違いだから、もし僕が
やっちゃってたら指摘してね。」

・・・とケーススタディを
共有しておくのは有効でしょう。

 

もっとも、
君子が獲っちゃだめな「卵」
商いとしている
僕にとっては
「そのとおりにしよう。」
と公言しにくいことわざですが(笑)

 

せめて「諫める意見」
をもらったときには
君子をめざして

ハイハイ!

と素直に聞こうと思います。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

(出展:『玉函山房輯佚書』)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年08月25日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第69弾、今回はイタリアから。

<年老いた鶏から美味しいスープができる>Gallina vecchia fa buon brodo


年を取ると経験も増えるし悪くないぜ!みたいなカンジです。

日本でも「一日の長」なんて言い方をしますね。

イタリアではとてもポピュラーな表現のようで、この言葉をタイトルとする古い歌もあります。

またずいぶん前ですが、ロードレース世界選手権9連覇・史上最強のライダーと呼ばれるバレンティーノ・ロッシさんが、このことわざが入ったTシャツを着て「まだまだやるぜ!」というメッセージを伝えた事で話題になりました。

ちなみにこのことわざはホントで、

年を経た鶏ほど、

肉は硬いですがアミノ酸量が増え、

うまみが多くなります。

シチューなど煮込み料理にするなら絶品なんですね。

日本では「廃鶏」なんて呼ばれてあまり用いられていませんが、肉文化の長いヨーロッパでは逆に年老いた鶏肉の方が高いこともあるくらい。

僕たちも年を経るほど旨味が増える、そんな人間でありたいですね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年07月20日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご鶏のことわざ第68弾、今回はフランスです。

<キツネとニワトリは結婚してはいけない>

『相性合わない者同士が一緒にいたらダメ』の意味です。


「仲の悪い動物」…というと日本では「犬猿の仲」犬とサルですが、フランスでは狐と鶏なんですね。

狩るものと狩られるもの、的なイメージでしょうか?

ちなみに雄鶏はフランスでは勇気の象徴ちょっとズルいイメージがあります。

雄鶏はフランスでは革命や富国強兵のシンボルにもなっていまして、スポーツのナショナルチームのユニフォームにも鶏マークが入っていたりします。

もともとはフランス人のルーツ「ガリア人」とフランス語の雄鶏の発音(ガリア)が同じことから、誇らしくフランス人を象徴する動物というイメージが強かったようです。

フランスでのキツネのちょっと悪イメージは、イソップ童話や、ずる賢いキツネが主要キャラの中世フランスの物語「狐物語」なんかが影響しているような気がします。

日本だと、キツネとニワトリどっちも「神様の使い」で神聖な印象がありますよね。

ニワトリは常世の長鳴鳥と呼ばれ天岩戸、神代の時代のお話から天の使いとして登場していますし、キツネはお稲荷さんのお使いです。

日本の対馬が舞台となった世界的大ヒットゲーム「ゴーストオブツシマ」でも、キツネは「お稲荷さんへ導く神の使い」として描かれ、海外サイトでも少し話題となっていました。

面白いですね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年07月5日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第67弾、今回は中国から。

<殺鶏嚇猴(鶏を殺して猿を脅す)>

誰か一人を罰して他の人へ警告する事を言います。みせしめ、ですね。

おサルさんは血を見るのが苦手でおびえるため、昔の中国では、猿使いが鶏を目の前で殺して血を見せ、おどかして手なずけたんだそうです。

そこから来ているんですね。

ちなみに「猴」と「猿」の2種類が中国語にはありまして、猿はオラウータンなど類人猿、「猴」は小さくてあまり賢くない方のサルのこと。

「殺鶏嚇猴」の“猴”はちいさいサルの方ですから、このことわざは『小物をビビらせて言う事をきかせる』イメージなのかもしれません。

熊本地震の際にデマをツイートした人が即逮捕されましたが、対応が早かったことから「あれは見せしめだった。」なんて指摘する人もいますね。あんなカンジでしょうか。

このことわざ、中国では割とよく使われる警句でして、例えば2週間くらい前の中国の記事『プライムデーの前にアカウントを安全に保つには?(Prime day前如何保证账户安全?-雨果网)https://www.cifnews.com/article/96738』でも使われています。

Amazonで販売する大口の業者が次々とアカウントブロックされていまして、これは不正を考える業者に対して6月にあるAmazon一年に一度の大セール「プライムデー」の前に牽制したい、“鶏を殺してサルを脅しているのだ”…と推測する識者コメントが載っています。


干支の12支は中国発祥ですが、ケンカばかりするサルとイヌの仲裁するためにニワトリさんが間に入り、サル(申)→トリ(酉)→イヌ(戌)の順になったと言われます。

中国では、『鶏さんはおサルさんを抑える』というイメージなのかもしれませんね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年06月3日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第66弾、今回はドイツから。

<目の見えない鶏でも小麦に行き当たる>

とにかくトライ続ければ良いものに当たるよ、の意。ヘタな鉄砲数撃ちゃ当たる、ですね。

東欧にもまったく同じ表現のことわざがありまして、これは『才能がなくっても努力すれば成功するよ』の意味だったりします。

どちらもポジティブな意味ですね。


ちなみに鶏さんはあまり目が良くありません。

高く飛び、遠くを見通すワシやトビは人間の4倍もの視力があります。

でも鶏さんは……視力で言うと0.07程度。

視力検査でいうと、一番上の大きなマークがまったく見えないレベル。

そして、さらに夜は何にも見えなくなります。

夜見えない「鳥目」という言葉は、もともと鶏さんが由来なんです。

なんで鳥によってこんなに違うのかと言うと、

これはやはり空を飛ぶ必要がなくなった事が大きいんじゃないかと思います。

遠くまで見る必要が無いわけですから。

その証拠に、同じく空を飛ばない鳥たち、

ペンギンも視力0.1程度でほぼ鶏さんと変わりませんし、

オーストラリアのキウィにいたっては全く目が見えません。

とかく生き物は無駄なリソースには極力エネルギーを割かないように進化しますので、恐竜→鶏の進化でいろんなものを捨てて『洗練されてきた』結果だとも言えます。

コロナ禍、ふたたびのまん延となっており先が見えない状況ではありますが、僕たちもニワトリさんのようにとにかく行動・トライで結果につなげていくしかないですね!

ここまでお読みくださってありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年04月29日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご鶏のことわざ第65弾、今回は中国から。

<王述擲卵(おうじゅつてきらん)>

カッとなって愚かな事をする、というような意味です。


昔々、東晋という国に、王述さん、という方がいました。

この方、めっちゃくちゃ短気でせっかちな人で、

ある時、ゆでたまごを食べようとしたところ、

ツルン!と箸から逃げた。

思わずカッとして手でつかんで床へ投げつけたところ、

どこまでもコロコロと転がっていく……

その転がるたまごを追いかけてゲタの歯で踏みつけようとしたら、

またまたツルン!とすべってあちこち転がり続ける

さらに激怒した王述さんはその玉子を手づかみにして口に入れ噛み潰し、即座に口から吐き出した。

そのハナシを聞いて、王羲之さんは大笑い。

「あの才覚あった親父(王承)がもしおんなじことをやってたら、今頃あんな富ある名家にはなってなかっだろうね。ましてやあのボンボン息子の王述がするなんて(笑)」


というお話。

この王述さんのお父さん(王承)は晋の国で出世し名門貴族となった方で「とにかくすごい立派な人物だ。」という評判でした。息子の王述さんもそれなりには優秀な方だったようですが、とにかく癇癪持ちで「親父はすごかったのに。」と言われがちなポジションの人。あと『王義之さんと仲が悪かったこと』で有名です。

最後に出てきた王羲之(おうぎし)さんはとんでもない大人物です。大将軍で超有名書家、皆さんのパソコンにも入っている行書・楷書・草書の書体を作った方。

なにせ遠く離れた日本ですら、奈良時代~近代に至るまで王羲之さんの書がずーっと字のお手本だった。それくらい超メジャーな人。

じつは怒りんぼの王述さんは、役人だった若い頃の王羲之さんの失礼な態度に腹を立て、上司(州知事)の立場からパワハラをかけ王義之さんを辞職&隠遁させたという過去があったのです。

王羲之さんからすると、アノこんちくしょう「笑い倒してやれ!」という気持ちがあったのでしょうね。

なんだかいろんな意味で小っちゃいエピソードですが、

結局のところ、このお話が現代まで残っているのは、

現代で言うならば『有名人が自分の持ち番組で、気に入らないヤツの失敗を笑い飛ばした』みたいなものでしょうか。

「あの」王羲之サンがそう言った……という事が、1600年未来の現代までエピソードを残したのです。

このお話が書かれた書物『世説新語』では、

ゲタの歯で踏むのを失敗したシーンや、卵が転げて止まらない様子も、不必要なくらい目に浮かぶようにかなり詳しく描写されています。

当時も、巷で面白おかしく広まっていたのかもしれません。

とはいえ千年以上も残る『ことわざ』にされてしまうなんて…書物の影響・メディア(?)の力おそるべしですね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:ニワトリさんは見飽きた!?【たまご鶏のことわざ】その30 | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年01月19日