小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記SOMMELIER DIALY

デザフェスの納豆のにおいマフィンの件で思うこと

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

デザインフェスタ出店の
マフィン屋さんで
納豆匂がして糸が引く
マフィンを販売して
食中毒が出た件ですが、

保存方法が
かなりずさんで
レシピを改悪していた
など、

思った以上に
無知なまま製造されていたことで
大きく炎上していますね。

お菓子の砂糖は
保存性を高める役目が
あるのですが、

そのお店では
健康をうたいたいがあまり

レシピの砂糖を
大幅に減らしたことで
菌繁殖への抑止が弱くなっていた
可能性が指摘されています。

 

誠実で悪気はなかったとしても
「知らなかった」は
命を預かる食品では
あってはならない罪ですよね・・・。

 

このニュースを見て
僕がサラリーマンだったころの
ことを思い出しました。


僕は20代の頃
大手食品メーカーの
開発研究員でした。

 

二百年を越す老舗だけあって
革新に向けてさまざまな
チャレンジをしつつも

超!
保守的な部分
もつ企業でした。

そのひとつが

品質管理。

めちゃめちゃ厳しい!

のです。

 

僕は新商品を開発して
「ヒットを飛ばそう!」
と考える業務でしたから、

いろんなアイデア試作を
販売までこぎつけるべく
いろんなレシピを
試していました。

 

そして、
その話が進むたびに

品質保証部

という部署に
「確認」を取らなくては
いけない仕組みでした。

チェック機関、
ディフェンスの部門です。

「今度、これこれこういう
スペックのレシピで、

こんな風な新しい
製法をしようと
考えています。

大丈夫でしょうか?」

・・・と
開発担当が
確認をとります。

 

で、オッケーが出れば
新発売に向けて一歩前進なのです。

ところが・・・

なかなかオッケーが出ない。

めっちゃ厳しい
関門だったのですね。

たとえば、

「この調味液のレシピは
塩分を2%下げまして
めちゃめちゃまろやかな
タレにします。」

殺菌温度を1℃下げれば、
すごくカツオだしの香りが香る
新商品になります。」

なんて風に
確認を取るのですが、

これにオッケーがでない・・!

出ないどころか、

『開発研究員の皆さん。
先日、指標としている
日本在来の菌で

最も耐熱耐酸性の高い菌が
更新されました。つまり、

新たな指標菌が
発見されました。

求められる新商品スペックは
今より酸度が〇上がり、
必要な加熱温度は〇℃上がり、
殺菌時間も〇秒長く

必要になります。』

 

なんて連絡を
まわしてきて、

従来の製法すら
NGになる。

 

「そんなんじゃ厳しすぎです。
美味しいものなんて
作れなくなるじゃないですか!」

 

「沖縄の離島にしかいない土壌菌、

しかも混入しても
ホンのちょっと
色がくすむ
だけ
の耐熱菌なんて、

別に気にしなくても
イイじゃないですか!」

なんて文句も言ってみても
ガンとして受け入れられません。

 

いったい
売上をあげる気があるのか!
あの部門は・・・!

なんて憤ったことも
ありましたが、

今になってみると
若いころの僕の方が
カンゼンに間違ってますね。

 

彼らの大事さ・正しさが
よ~く分かります。

安全性って、
『根拠』をどれだけ
大事にできるか、
なんですよね。

過去に危害が出てないから
今後も出ないだろう

なんてことはあり得ないですし、
新しいことをやるなら
死ぬほど根拠を調べる
必要があるわけです。

 

例えばレトルト食品が
栄養たっぷりで常温で
一年も保存できるのも、

膨大なデータと知見を
根拠にできているから
なんですね。

 

100―1=0

これは食品業界で
よく言われます。

100の成功を重ねても
1ミスがあれば
全て台無しです。

 

根拠データを元に
「万が一」を
「億が一」にも無いように
見張ってくれる部門が
あるからこそ、

むしろ安心して
大胆な提案に
専心できるわけです。

F1カーだって
ブレーキが超高性能だからこそ
高度な加速ができるんですよね。

たまごについては幸い
たくさんの安全性データが
業界で共有されています。

 

おなじ食品にたずさわる身として
しっかり学び根拠で判断して、
安心を提供していくよう
肝に銘じていこうと思います。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , ちょっとつぶやき2023年11月17日