こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
海外には少し変わったたまごがあります。
その名も「低温殺菌卵」
“パスチャライズドエッグ(Pasteurized Egg)”
って言いまして、
卵が固まらない温度で
長時間加熱して菌の悪影響を排除した卵です。
認証もありまして、たとえば
米国でパックに『P』の文字が付いていれば
この低温殺菌卵のこと。
認証基準でいうと
54~60℃の温度で1時間以上
加熱殺菌された卵
ということになります。
けっこうコストかかりますから、
1パックあたり1.5ドル(224円)
ほど高くなります。
この卵の最大のメリットは
「安心して生食できる」
です。
米国農務省(USDA)は
「ぜんぶの卵を低温殺菌したら
年間11万件のサルモネラ食中毒を減らせるよ」
なんて提案していますね。
ネット普及により
世界の裏側の国の料理レシピも
気軽に試せるようになり、
欧米でも
生食に近いたまご調理方法が
広がっているんですね。
それに伴い
たまごの加熱不足による
サルモネラ食中毒も多く出ているんです。
11万件減る、ってことは
年間11万件の危害が考えられるわけです。
それが、
安心して食べられるようになる。
なるほど!
デメリットもありまして、
たとえばメレンゲにならない。
この写真ほどじゃないですが
全体に火が通ってまして
うす~く白身が白っぽくなっています。
マヨネーズやメレンゲ
すなわちスイーツやパンなどは
ちょっとうまく作れないんですね。
そのかわり
目玉焼きやなんかは
同じように美味しくできますし、
生にちかい半熟目玉にしても安心!
ということです。
◆けっこう深刻な欧米のニーズがある
じつは鶏卵による
米国でのサルモネラ食中毒は
けっこう深刻でして、
たとえば2018年には
9州で流通した卵で
サルモネラ菌の問題が発生し
2億個のたまごが回収になったことも。
つい4か月前にもコストコで流通する卵が
20州でサルモネラ理由から
回収騒ぎになりました。
これは
ヨーロッパでも同様でして、
欧州疾病予防管理センター(ECDC)が
「サルモネラ症 - 2022 年次疫学報告書」
を昨前に発表した際には
“サルモネラ感染アウトブレイクにおいて最もリスクが高かった食品は例年につづき卵および卵製品であった”
と記述しています。
欧米では卵は
『安心して生で食べられる』とは
ちょっと遠い状況なんですね~。
◆日本ではほぼ用なし!?
ちなみに日本では
鶏卵に関しては非常に高度な
飼育・洗卵選別が行われており
生食に関しては世界的にも
まれにみるハイレベルな
管理体制ができています。
ほぼすべてのたまごが
生食に問題がありません。
厚生労働省発表によると、
昨年(2024年)日本で発生した
サルモネラ菌由来の食中毒21件のうち
卵が原因と断定されたものはゼロ。
長い間かけてこの体制を
全国でつくった
先達の方々の努力に感謝です。
そして
ここ10年ほどのあいだでも
さらに高度な仕組みとして
進化し続けています。
上の写真は
ウチの洗卵選別工場の
最新機器ですが、
高度な光学センサーで1つ1つ
全ての卵の内部と外部をチェックします。
加工時に菌リスクのでる
業務用の「液卵」商品以外では
いまのところ
低温殺菌卵が日本で導入される
必要性はなさそうです。
米国で暮らされるときに
スーパーで探してみても
良いかもです。
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。