太陽のかんづめ
まだまだ残暑厳しいですね。
さて、こんなお話をご存知でしょうか?
ある缶詰のメーカー。
中東のある国に、自社の缶詰商品を売ることになりました。
もちろん、味には自信があります。
エキゾチックな雰囲気を出すために、「太陽」のマークを記した高級感あるデザインをあしらい、商社を通じてかなりの量を送り込みました。
さて、その結果は・・
まっったく売れませんでした。
「なぜ売れないんだろう?」
担当の商社営業マンは気が気じゃありません。
思いあぐね、売り場にきたお客さんに、
「この商品の、どこが悪いんですか?」
と訊ねてみました。
すると、予想外の答えが帰ってきたんです。
「ああ、そりゃそうさ。太陽のマークが書いてあるからね。」
「!?」
「あの憎たらしい太陽が書いてあるモノなんて、買うわけないよ。」
そう。
砂漠の国では、太陽は憎っくきカタキなのでした。
コーランにも、「神は人に試練を与えるために、太陽をもたらした」
という一節があるそうです。
つまりそれくらい辛いつらい苦しみを与える対象ということなんですね。
日本人にとっては、太陽は豊穣の恵み。
それどころか、天照大神(あまてらすおおみのかみ)、たたえるべき神様です。
文化の違いを感じますね。
もっとも、
「9月に入っても猛暑は続きます。」
なんてニュースを目にすると、
「俺は今だけアラブ人だ!太陽のバカヤロー!」
・・・、ちょっとだけ言いたくなります。
◆おまけ
ちなみに件の缶詰、「月」のマークに変えたところ、立派に人気商品になったそうです。 アラブ圏では、月は砂漠の闇夜をやさしく照らす、慈愛の象徴なんだとか。
参照:「読むクスリ」(文春文庫)