こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
どの料理店様も「美味しい!」を探求されていらっしゃるかと思います。
でも実は、
「美味しくない」
を追求すると、
意外にもお店の繁盛とお客様の幸せにつながる事があります。
◆味覚研究から見えてきたファン化のヒント
20年ほど前、僕が食品メーカーの開発研究員だった頃のお話です。
味覚研究が専門のとある大学教授に、
「ぜひ、マズい食べ物を作ってください。」
……と言われたことがあります。
ビックリしました。
「そうすると、ファンが増えます。」
と言われ、またしてもビックリ。
なんでも嗜好と味覚の研究によると、
「めちゃくちゃ苦い」
「とんでもなく臭い」
「べらぼうに不味い」
など、強烈な特徴の味だけが、
「死ぬほどうまい!」
という最強の「好き」になり得るのだそうです。
最初は嫌いでもいいので『強い印象』であればあるほど、それが転じたときに「大好き」に変わるのだとか。
「くさやめっちゃ臭い。」→「この香りがサイコー!」みたいに。
うーん、言われてみればそういう感覚ってありますよね。
そもそも特徴がウスいものを、大好きになったりはしないですし。
“イヤなヤツ!”→“大好き!”って、
なんだか少女漫画のテンプレみたいですね~。
「なのに、世の食品メーカーは万人が好む味を作ろうとするあまり、可もなく不可もない80点平均で特徴のない味の商品ばかり作っていますよね?」
「これでは『本当に美味い!』と感じる食べ物が世に無くなってしまいます…。」
「だから‥‥‥。」
不味いものを積極的に世に出してください!
と、そんなお話でした。
ただ、その当時は「そんなこと言ってもなぁ…(汗)」と正直思ってました。
だって、「大部分の人が美味しくないと思うもの」をあえて作ってね! という話ですから、
「売れなきゃハナシにならないよなぁ。」
「大部分が『まぁまぁ美味しい』と思っているものなら、それでいんじゃないかなぁ。」
と若い頭で考え、その貴重なご意見を頭の中にしまいこんでしまったのです。
ですが、その後卵屋を継ぎ、
「ぜひ不味いものを作ってください」
の真のメリットが『小さい会社』にこそあることに気づかされたのです。
◆不味い→大ファン!となるコツ
取引先の人気カフェ「K」さんは、自家焙煎のコーヒーがウリの専門店。
「パフェ」がメニューにあるのですがコレが面白くって、
「鬼のように苦いパフェ」なんです。
クリームとバニラアイスの間に超濃くいれたエスプレッソが何層も入っていて、もう「苦みを味わうためのパフェ」といっても過言じゃないくらい(笑)
いわゆる普通のパフェを想像して注文すると、「なんだこれは!?」となります。
でも、それで良いんです。
いや、これがイイんです。
これ、『コーヒーが大好きなヒト』のためのパフェですから。
苦みと甘みの連続ハーモニーがとにかくクセになる美味しさでして、
こんなのはここでしか味わえないので、僕も時々思い出して無性に食べたくなります。
つまり、中小規模のお店こそ、上の大学教授が言う『ファンになる100点の料理』が出せるということです。
「お客様を選べる」のが中小企業の強み、
仮に、10人中8人が「こんなの絶対次から頼まない!」となっても、残り2人が熱烈大好きになってくれるなら、その方が繁盛につながるんです。
だってどのみち全部のお客様に食べてもらう事は不可能なんですから。
上記のパフェで言うならドトールなら万人受けの良いマイルドな風味にするでしょう。つまり80点平均を狙わざるを得ない。
僕も、某大手食品メーカーでいたときに、そのことを痛感しています。
めちゃくちゃ酸っぱい調味料、とか超くさい発酵食品、なんてのは規模が大きいと出せないんです。
「誰のために」を考える事がキーポイントなのです。
僕たちも、「カルボナーラでだけメチャクチャ美味しくなる卵」なんてものを育てお届けしてますが、大部分の方はご興味ないかと思います。でも人気のたまごなんですよ!?
そういえば、甲府にあるパスタ店さんが「パスタ一人前100gなんて誰が決めた?」「パスタはお腹いっぱい食べるのが幸せなんだ」と張り出して、ボリュームあるメニュー提供をして話題になっていました。
これも100点を狙う、同じ考えかもしれません。
これ突き詰めると、幸せになってもらう為ですよね。
なぜお客さんに美味しいものを出さないといけないのかというと、喜んでもらうイコール「美味しい」だから。
「美味しい」は目的じゃなくて手段なんですね。
であれば、本当に幸せにしたい人のこと「だけ」を考えて超よろこんでもらえる、他のヒトには「マズい!」と言われるメニューを‥‥‥ためしに一品!考えてみてはいかがでしょうか。
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。