小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記SOMMELIER DIALY

『鶏は朝』という伝説 その⑤【日本・弘法大師編】

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

『ニワトリが鳴いたら朝だよ』

が重要なキーになる、
世界中にある物語の紹介第5弾です。

今回は日本のお話し。


和歌山県の串本海岸に、
大島に向かってまっすぐ立った岩石が一列になって
並んでいる、

『橋杭岩』という名所があります。

 

昔々、弘法大師が布教に訪れた際
大島の住民がとても不便だったのを見かね、

「橋をかけよう。一晩で。」

と考えました。

大勢の工人を指揮して作業にかかり
順調に工事は進んでいましたが、

夜半にアマノジャクが現れたのです。

「じゃまをしてやろう。」

と、串本にある民家のニワトリの

止まり木の竹の中に、
お湯を注ぎ足しました。

ニワトリはびっくりして
いっせいに鳴き始めたので、

工事をしている人夫たちは

「朝になったぞ!」

とあわてて工事をやめてしまった。

その際の
つくりかけの橋脚が風化して
いまの橋杭岩として残っているのです。


・・・というお話し。

 

・・なんでしょうね?
弘法大師さまも、一晩じゃなくて
工期を一年くらいとっても
良かったんじゃないでしょうか・・?

 

じつは高名な仏教者って
土木工事の達人でも
ありました。

仏教者ですから
「仏教を広める」のが本業なのですが、
この当時の仏教者さんは土木工事
あちこちでやっているんですよ。

近い世代の名僧・行基さんも
20を超える温泉や橋を建ててますし。

弘法大師さんも
唐で学んだ最新の工法を駆使して
ダムや橋を各地に建て、
人民を救済していたんですね。

 

ですからもしかすると、
他の地域で相当困っている人がいて

『すぐに発たないといけない!』

なんて状況だったのかもしれません。

誰かに引き継げば良いのだけど
そんな人材がいるならばとっくに
彼らだけで建てていたわけで、

素人だけに任せると労災大ケガに
つながるかもしれず泣く泣くあきらめた…のかも。

 

あと、お湯で

ニワトリを一斉に鳴かせる方法

も興味深いですね。

ニワトリの朝鳴きは
体内時計でほぼ同じ時間に鳴くことが
分かっています。

当時の人は
疑いなく『鳴き声=定刻』として
時計代わりに活用していました。

また、

「光や音など刺激で目覚め鳴く」

「一羽が鳴くと他も次々鳴く」

という習性がありますから、
手前のニワトリだけに刺激を与えて起こし

「一斉に鳴かせる」
ことは可能

なんですね。

ちなみに、
このお話しには
別バージョンがあります。


アマノジャクは弘法大師の旅のお供

この地の不便な様子を見て、

「民を助ける橋をかけようぞ!
人に見られないよう

一晩で。2人で。」

と、橋を作り始めた

メキメキと大岩をかついで
どんどん橋脚をつくっていく大師さまに
引け目を感じ、

アマノジャクは
「このままだと立派な橋ができてしまう。
どうにかして、この計画をつぶそう。」

・・・と考え、

ニワトリの鳴きまね
したのです。

すると、
弘法大師は
「しまった!もう朝になったのか。」

と、工事をあきらめてしまいました。


・・というお話し。

こっちは和歌山県HPにもある
お話しなんですが、

さすが高野山のある地域だからか、
空海様がアマノジャクを従え
自身も岩をかつぐ
スーパー怪力マンになっています。

個人的には現場監督的な前者の
弘法大師さまの物語が
現実味があって好きですね~。

竹筒にお湯をそそぐ、というギミックも
アマノジャクの知恵と工夫が感じられて
ちょっと面白いです。

少なくともただの鳴きまね
あっさり弘法大師さまがひっかかるより
ストーリーに知性を感じますね。

 

飲食店さまでも
エピソードにちなんだメニュー、
鶏肉料理のパワーランチとか
なにかできそうな気もします。

ここまでお読みくださって
ありがとうございます。

 

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カテゴリー | ソムリエ日記 , 鶏さん・鳥さんのコト2024年12月20日