カラスみたいなニワトリに見るプロの生き方【沙石集】
本日はニワトリに絡んだ故事を。
こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。
アメリカ大統領選挙、終わりましたね。
民意たる結果も興味深いですが、
それ以上に
「真のリーダーはどっちか。」
を長い期間かけてじっくりと
全国民が考えて判断できる、
そんな米国大統領選挙システムが
とても面白いです。
パッと見た印象がさいしょ良くても
何度も何度も公開討論したり
スピーチすることで、
「あれ!?
見た目の印象とちがうな。」
なんて分かってくるわけですね。
そういえば、
鎌倉期の仏教説話集『沙石集』に
こんなニワトリのお話しが出てきます。
天竺(インド)に
質多居士さんという在俗の聖者が
住んでいました。
そこに、善法比丘という
しょっちゅうやってきては供養を受ける
あつかましい僧がいたんですね。
あるとき、
居士さんが
遠方から来た僧侶たちを
手厚くもてなしました。
それを見た善法比丘、
「ずるい!
なんであいつらだけ!!」
・・と、
おおいにねたみ
さんざん悪口を言ったのです。
居士さんはそれを聞いて、
「ワシは昔、諸国を旅していた。
ある国で、
見た目はニワトリなのに
鳴き声だけがカラスそっくり
に鳴く鳥を見たんじゃ。
鶏と烏(カラス)の間に
生まれたトリだから
「烏鶏(うけい)」
と呼ばれておった。
いま、
仏門にいるのに無頼の徒
そっくりの言葉を吐く
お前さんを見て、
ワシはこの『烏鶏』を
思い出したわい。
こう言って諭したところ、
それ以来二度と善法比丘は
姿を見せなくなったそうな。
・・・というお話し。
『言動』と『本質』を
一緒に高めなさい、
ということですね。
職業的「プロ意識」に
通じるものがあります。
教師や警察官は僧侶と同じく
相応の「言葉づかい」を
求められるでしょうし、
料理人さん、パティシエさんは
食や衛生面に関しては
人よりも厳しい倫理観と行動が
求められるでしょう。
ぼくたち卵屋であれば、
生命や食材に関する敬意は
誰よりも高く持った言動を
しなくてはいけないはずです。
あと余談ですが、
ニワトリはキジ目でカラスはスズメ目
かなり離れた種。
交雑することはあり得ないみたいですね~。
つまり烏鶏(うけい)は存在しないんです。
◆烏骨鶏という実在のトリ
でも、
烏骨鶏(うこっけい)なるニワトリならいます。
マルコポーロの東方見聞録にも出てくる
昔からいる伝説の鶏。
これは皮ふや内臓が真っ黒で
「骨まで黒い」
と言われたほどなので
「まるでカラスみたいだ。」
という意味で
「烏(からす)骨(ほね)鶏(ニワトリ)」
となったもの。
カラスとのハーフではありません。
烏骨鶏のたまごは
ちょっと小ぶりですが
弾力性も強く黄身も割合多くて
しっかり楽しめるおいしい卵。
一週間に一度しか産まないため、
だいたい普通のたまごの7倍以上高い!
のがネックですが、
上記の「烏鶏(うけい)」の教えに
思いをはせながら一度食べてみるのも
面白いんじゃないかと思います。
ここまでお読みくださって
ありがとうございます。