小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

ソムリエ日記 記事一覧

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

こだわった煮玉子をメニューに取り入れているお店がずいぶん増えました。

食感や漬ける出汁・製法も多様化して、

半熟トロトロからしっとり風味、中には出汁液を注射したすんごいジューシーなものまであります。

さて、次の多様化の一手として、

卵の漬物

が面白い!です。

たまごの漬物 メリット
 ①保存ができる
 ②味の独自性が出せる
 ③健康面でアピールできる


世界的には、たまごを漬ける事で保存性を上げた食べ物は、結構いろいろあります。

例えば、中国料理では、酒かすに漬けこんだ四川名物「糟蛋(ツァオタン)」や、発酵茶に漬けた「茶葉蛋(チャーイェダン)」なんてものがありまして、特徴ある濃厚風味が楽しめます。

和食でも『卵のぬか漬け』があります。あ、あと「ゆで玉子の酒かす&白味噌漬け」も超美味しいですよ。これは江戸時代の人気レシピ本『卵百珍』にも載っている伝統メニューです。

洋風では『玉子のピクルス』がありますね。これも、白ワインを使ったりワインビネガーをうまく使ったりと、工夫で独自の味が追求できて、本当に面白いです。お酢の効果で独特のしっかりした白身の食感になりますので、うまく料理アレンジするとお客様の驚きにもなります。玉子サンドイッチやタルタルソースに玉子ピクルスを使うと、爽やかでビックリするくらい美味しいです。

また最近では「味噌ヨーグルト漬け」というジャンルがありまして、ゆで玉子を漬けるとこれまた超美味です。名前から味のイメージがしにくいのでメニュー名などはちょっと工夫が必要かもしれませんが、伝え方次第でラーメントッピングや居酒屋メニューでも相性良さそうです。

そういえば、東南アジアの「皮蛋(ぴーたん)」も、卵の漬物ですね。ちょっとクセがあって人を選びますが、おかゆなどシンプル料理で超ウマイです。 自作はちょっとだけムズカシイですが…。

コロナ禍3たびの緊急事態宣言、お客様のご来店数がさらに読みにくくなっています。

また糖質制限やダイエットも含め、『健康感』がとても重要なキーワードとなってきています。

お店で余りそうな分の卵をうまく活用し、

ぜひ、あなたのお店メニューで、「ネクスト煮卵」として漬物たまごを検討してみませんか!?

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , 飲食店さまへ 2021年05月14日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

つい先週、こんなニュースが海外で話題になっています。

“シルバーレイク公園でのボランティアによる卵漬け作業に抗議が殺到 (Protest greets volunteer egg-addling effort in Silver Lake Park | Post Bulletin)”

これ、どういうことかと言うと、

米国にシルバーレイク公園という大きな自然公園があるのですが、そこのガン(ガチョウ)が増えすぎたのですね。で、数を減らすために「卵に油を塗る」作業をボランティアでしていたところ、「なんてかわいそう!」という抗議が殺到して騒ぎになっているのです。

卵が孵化14日目になっていないものに限るから人道的だよ、残す卵もあるので全滅じゃないよ、という意見に対して、「生まれないのを分かっていて抱卵させるなんて親鳥がかわいそう」「プラスチックの偽卵と入れ替えるべき」「規模が大きすぎだ」などの反論がでて対立しているようです。

さいしょに読んだときは「そんなことせずに獲った卵を責任もって食べちゃえばいいのでは。」とも思ったのですが、それだと減った分だけまた産んでしまうので意味がないんですね。

うーん、動物愛護の視点と環境バランスの観点が絡み合っていて、なかなか難しい問題です。

さて、

事の是非はちょっと置いておいて

ちょっと興味深いのが、

「卵に油を塗る」という点。

なぜ、それで「雁の数を減らせる」のでしょうか‥‥‥!?


〇卵は呼吸をしている

すべすべとした卵のカラ。

実はこの卵殻には、なんと一万個もの微細な穴があいています。

「気孔」というのですが、そこから呼吸(ガス交換)をしているんです。

有精卵の場合はこの気孔から酸素を取り込んで胚が育ちますので、すなわち上記のニュースのように油でコーティングしてしまうと、かわいそうですがそれ以上育たなくなります。

有精卵だけじゃなく、あなたのご家庭の冷蔵庫にある卵も同じ。

呼吸(ガス交換)をしています。

なので、保存中にその影響がでます。

食用たまごの場合はメリットとデメリットがありまして、

まずメリットは、呼吸の結果、ゆでたまごがキレイに仕上がる、ということ。

産みたての卵にはたっぷりの炭酸ガスが含まれていてpHが低く、そのせいで茹でると白身が卵殻膜とくっついてきれいに剥けません。あちこちくずれてボロボロになっちゃいます。

でも、気孔から3日ほどかけてゆっくりと炭酸ガスが抜けまして

そうすると、ツルン!と剥けます。

呼吸のデメリットは、卵の「鮮度」が落ちやすくなること。

油などでコーティングして呼吸を止めると、有精卵は成長が止まってしまいますが、

卵の鮮度は長持ちすることが知られています。

これはいろんな研究データがあるのですが、油などでコーティングして呼吸を止めることで、まず黄身の盛り上がりや、白身のプリッとした弾力性などのいわゆる「張り」が長持ちします。

海外にはそのために開発された卵に膜をつくるバイオコーティングまで作られています。

(関連:ふりかけるだけで卵の保存性を劇的に伸ばすバイオシールドが開発される!?【インド】 | たまごのソムリエ面白コラム

その他、呼吸によりそばにあるいろんな食材の香りを吸ってしまうなど、いくつかの影響があります。

あまり卵を長期間保存することなんて無いかと思いますが、災害などで局所的に食料供給が絶たれ、なにがしかの保存性を求められるサバイバル状態が来るかもしれません。

もしそんなときがありましたら、卵と油の関係を思い出してくださいませ。

上記のニュースの環境トラブルは重要な問題ですが、卵と油、プラカードに書いてありますように「ケーキのため」だけに使えるようになりたいものですね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2021年05月6日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

ドイツ・オランダにまたがる北海沿岸、そこにそそぐエルベ河周辺地域では古くから、

「卵を割ったあとのカラは、必ずくしゃくしゃにして捨てる」

…という風習があります。

子供のころからお母さんに

「ちゃんと卵のカラをつぶさないとダメよ。」と言われて育つのです。

なぜなら、

小さな妖精(エルベ)が卵のカラを船がわりにしてやってくるから。

この川や北海では、卵のカラがぷかぷか浮いているのがよく見かけられまして、これは妖精が船として乗り回したあとのものなんだとか。

「あら、かわいらしくていいじゃない。」

なんて思っちゃいけません。

あちらの「妖精」っていうと日本で言う『妖怪』くらいの位置づけでして、

良いヤツもいるけども、

子供を誘拐したり病をもたらしたり、

悪い妖精がいっぱいいます。

見た目もゴブリン?みたいな醜悪な姿のヤツもいて、

そんなヤツがやってくるきっかけ、“乗り物”を提供するなんてとんでもない!

という事ですね。

うーん、日本の「夜中に口笛を吹くとヘビがやってくる」みたいなカンジでしょうか?


〇まだある!卵のカラ伝説

広くヨーロッパでは、ほかにも卵のカラと妖精の伝説がありまして、有名なのは「取り換え子」のお話。

『人間の子がひそかに連れ去られ、その身代わりとして妖精やエルフ・トロルなどが成りすましている。』

という言い伝えでして、

ある日ふと、自分の子供に違和感を感じる。

「どこかヘンだわ‥‥‥。」

と思っていると、育つにつれダンダン狂暴になってくる。

これ、相当怖いですよね…。

見破る方法は、卵のカラを火にかけて料理をしたりカラでビールを醸すフリをすること。

「卵のカラで料理なんて、こんなの見たことないぞ!」

と叫んで消えてしまうのだとか。(連れ去られた子供は、地域によって戻してくれたり消息不明だったり…)

(参照:たまごのチョット怖い伝説【取り替え子】 | たまごのソムリエ面白コラム

ヨーロッパに限らず世界にはたくさんの卵の伝説がありますが、「たまご」じゃなくて「たまごのカラ」に焦点が当たっているのは、なかなか珍しくて興味深いです。

卵=神聖というイメージが影響しているのは間違いないですが、あと、

『いらなくって捨てる物でも気をつけないと、災いを招いたり、役立ったりする事があるのだ』という昔の人の戒めなのかもしれません。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2021年05月3日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第66弾、今回はドイツから。

<目の見えない鶏でも小麦に行き当たる>

とにかくトライ続ければ良いものに当たるよ、の意。ヘタな鉄砲数撃ちゃ当たる、ですね。

東欧にもまったく同じ表現のことわざがありまして、これは『才能がなくっても努力すれば成功するよ』の意味だったりします。

どちらもポジティブな意味ですね。


ちなみに鶏さんはあまり目が良くありません。

高く飛び、遠くを見通すワシやトビは人間の4倍もの視力があります。

でも鶏さんは……視力で言うと0.07程度。

視力検査でいうと、一番上の大きなマークがまったく見えないレベル。

そして、さらに夜は何にも見えなくなります。

夜見えない「鳥目」という言葉は、もともと鶏さんが由来なんです。

なんで鳥によってこんなに違うのかと言うと、

これはやはり空を飛ぶ必要がなくなった事が大きいんじゃないかと思います。

遠くまで見る必要が無いわけですから。

その証拠に、同じく空を飛ばない鳥たち、

ペンギンも視力0.1程度でほぼ鶏さんと変わりませんし、

オーストラリアのキウィにいたっては全く目が見えません。

とかく生き物は無駄なリソースには極力エネルギーを割かないように進化しますので、恐竜→鶏の進化でいろんなものを捨てて『洗練されてきた』結果だとも言えます。

コロナ禍、ふたたびのまん延となっており先が見えない状況ではありますが、僕たちもニワトリさんのようにとにかく行動・トライで結果につなげていくしかないですね!

ここまでお読みくださってありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年04月29日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

「たまご型」は数式で表すことができます。

2つの有名な「数式」がありまして、

考案しているのは、どちらもスゴイ人。

一人は、17世紀フランスの哲学者で数学者、デカルトさん。

「我思うゆえに我あり」

という、めちゃくちゃ重要な哲学の命題を考えた方で、数学では「解析幾何学」の創始者です。

たまご型の数式は、こんなカンジです↓

グラフだと、こうなります。

うーん、ちょうど黄身の部分くらいが0点にくるカタチですね。

もう一人は、

同じく17世紀フランスの天文学者カッシーニさん。

土星の4つの衛星を発見し、木星の大赤斑(目玉みたいなデッカイ模様)を発見するなど様々な功績を上げられた方です。彼の名前を冠したNASAの土星探査機「カッシーニ」がついにその役目を終了ということで、少し前に大きなニュースとなっていました。

カッシーニさんは、

「惑星はたまご型の軌道を回っている!」と考え、

その「たまご型」軌道を数式で表したんですね。

数式はこんなカンジです↓

うーん、これまた複雑ですねェ。

グラフだとこうなります。aとcに入る数字によって、8の字を描く軌道から卵型へ変形するカンジですね。

デカルトさんは哲学者ですが、人文学なんかは全く興味を示さなかったそうで、数学の研究によって得られた明快な論理を哲学体系でも重視したからと言われています。またカッシーニさんも、人知の及ばない天文という分野にゆるぎない論理を見た結果、後半生ではあいまいな「占星術」を大批判しています。

そんな論理的な考えを持つ2人の偉人の頭脳から、「卵」を表す数式が生まれたのはとても興味深いです。


〇卵型は自然界になぜ必要?

そもそも自然界の『たまご形』はタテからもヨコからも衝撃に強い形状なのですが、

最大の目的は、

また転がってもまた元の場所に戻って来るカタチであるということ。

巣が高い所にあって、仮にころがっても戻ってくる、割れにくい形状なんです。

自然界でちゃんと意味のある、理想の形状なんですね。

(ちなみにヘビやワニなど低いところで暮らす動物のたまごは真ん丸〇です)

そのカタチに魅了される学者さんも実は多くいらっしゃいまして、他にもいろんな「卵型の数式」が研究・発表されています。


〇いろいろある!『卵型』の研究

また、『卵型』だから起こる物理現象に注目している研究も多く、

たとえば

「卵は高速回転させると重心が上方にシフトし、空中に浮き上がる」

というビックリするような工学研究や、

「ミルクなどの粘性液体のなかで卵を回転させると、卵殻に沿って液体がせり上がってくる」

など流体力学の観点から卵カタチに着目した面白い研究などもあります。

美味しい!健康に良い!

……だけじゃなくって、

その「カタチ」そのものにも自然の摂理の神秘、まだまだ面白い秘密が隠されている!

そう考えると実にロマンがありますね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:超電導と空飛ぶたまご | たまごのソムリエ面白コラム

(x2 + y2)2 – 2a2(x2 – y2) + a4 – c4 = 0

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

仕事柄、たくさんの卵を割る事があります。

「液卵」といって、一度にたくさんの卵を使われるお店さまに、あらかじめ卵を割って計量しておく商品です。

何千という卵を割りながらいろいろ試してみると、カラがまったく入らない&こぼさない理想的な割り方があるんですね。

スピードを考えないのであれば、


➀カラを真っ二つにキレイに割る方法

まず、卵の側面をコツンと当てて、ヒビをいれます。

軽くでけっこうです。

次に、クルンと回してその赤道上の180°反対側をまたコツンと当ててヒビを入れます。

すると……!

まるでカッターで切ったかのようにキレイなヒビが入り、スパッと卵が割れます。


②割るたびにちょっとこぼしてしまう対策

今日は目玉焼き!なんていう朝。

卵を割る際に、フライパンの端っこやボウル、鍋なんかへコツンと当てて割る方も多いかと思います。

僕も一人暮らしの頃いつもそうしていました。

でも‥‥‥意外とこぼれるんですよね。

割る際の力加減もありますが、コツンとヒビを入れたときにどうしても中身が漏れてこぼれてしまうことがあります。

あれ地味に手間なんですよね~。

さて、ちょっとした事ですが、これを防ぐ方法があります。

それは、

卵を持って、その上側を割る

ということです。

1)利き手に包丁またはスプーン、反対の手に卵を持つ

2)見えているたまご殻の上部を包丁の背でコツンとたたく

これだけです。

コンコンと割った面が下や横を向いているからこぼれるんですね。

上を向いてるとこぼれません。

やってみるとわかりますが、

気づかずにカラの破片が入っちゃう心配もしなくて良いので、おススメです。

ぜひお試しくださいませ~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご全般コラム 2021年04月19日