小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

ソムリエ日記 記事一覧

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

ドイツ・オランダにまたがる北海沿岸、そこにそそぐエルベ河周辺地域では古くから、

「卵を割ったあとのカラは、必ずくしゃくしゃにして捨てる」

…という風習があります。

子供のころからお母さんに

「ちゃんと卵のカラをつぶさないとダメよ。」と言われて育つのです。

なぜなら、

小さな妖精(エルベ)が卵のカラを船がわりにしてやってくるから。

この川や北海では、卵のカラがぷかぷか浮いているのがよく見かけられまして、これは妖精が船として乗り回したあとのものなんだとか。

「あら、かわいらしくていいじゃない。」

なんて思っちゃいけません。

あちらの「妖精」っていうと日本で言う『妖怪』くらいの位置づけでして、

良いヤツもいるけども、

子供を誘拐したり病をもたらしたり、

悪い妖精がいっぱいいます。

見た目もゴブリン?みたいな醜悪な姿のヤツもいて、

そんなヤツがやってくるきっかけ、“乗り物”を提供するなんてとんでもない!

という事ですね。

うーん、日本の「夜中に口笛を吹くとヘビがやってくる」みたいなカンジでしょうか?


〇まだある!卵のカラ伝説

広くヨーロッパでは、ほかにも卵のカラと妖精の伝説がありまして、有名なのは「取り換え子」のお話。

『人間の子がひそかに連れ去られ、その身代わりとして妖精やエルフ・トロルなどが成りすましている。』

という言い伝えでして、

ある日ふと、自分の子供に違和感を感じる。

「どこかヘンだわ‥‥‥。」

と思っていると、育つにつれダンダン狂暴になってくる。

これ、相当怖いですよね…。

見破る方法は、卵のカラを火にかけて料理をしたりカラでビールを醸すフリをすること。

「卵のカラで料理なんて、こんなの見たことないぞ!」

と叫んで消えてしまうのだとか。(連れ去られた子供は、地域によって戻してくれたり消息不明だったり…)

(参照:たまごのチョット怖い伝説【取り替え子】 | たまごのソムリエ面白コラム

ヨーロッパに限らず世界にはたくさんの卵の伝説がありますが、「たまご」じゃなくて「たまごのカラ」に焦点が当たっているのは、なかなか珍しくて興味深いです。

卵=神聖というイメージが影響しているのは間違いないですが、あと、

『いらなくって捨てる物でも気をつけないと、災いを招いたり、役立ったりする事があるのだ』という昔の人の戒めなのかもしれません。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2021年05月3日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第66弾、今回はドイツから。

<目の見えない鶏でも小麦に行き当たる>

とにかくトライ続ければ良いものに当たるよ、の意。ヘタな鉄砲数撃ちゃ当たる、ですね。

東欧にもまったく同じ表現のことわざがありまして、これは『才能がなくっても努力すれば成功するよ』の意味だったりします。

どちらもポジティブな意味ですね。


ちなみに鶏さんはあまり目が良くありません。

高く飛び、遠くを見通すワシやトビは人間の4倍もの視力があります。

でも鶏さんは……視力で言うと0.07程度。

視力検査でいうと、一番上の大きなマークがまったく見えないレベル。

そして、さらに夜は何にも見えなくなります。

夜見えない「鳥目」という言葉は、もともと鶏さんが由来なんです。

なんで鳥によってこんなに違うのかと言うと、

これはやはり空を飛ぶ必要がなくなった事が大きいんじゃないかと思います。

遠くまで見る必要が無いわけですから。

その証拠に、同じく空を飛ばない鳥たち、

ペンギンも視力0.1程度でほぼ鶏さんと変わりませんし、

オーストラリアのキウィにいたっては全く目が見えません。

とかく生き物は無駄なリソースには極力エネルギーを割かないように進化しますので、恐竜→鶏の進化でいろんなものを捨てて『洗練されてきた』結果だとも言えます。

コロナ禍、ふたたびのまん延となっており先が見えない状況ではありますが、僕たちもニワトリさんのようにとにかく行動・トライで結果につなげていくしかないですね!

ここまでお読みくださってありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年04月29日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

「たまご型」は数式で表すことができます。

2つの有名な「数式」がありまして、

考案しているのは、どちらもスゴイ人。

一人は、17世紀フランスの哲学者で数学者、デカルトさん。

「我思うゆえに我あり」

という、めちゃくちゃ重要な哲学の命題を考えた方で、数学では「解析幾何学」の創始者です。

たまご型の数式は、こんなカンジです↓

グラフだと、こうなります。

うーん、ちょうど黄身の部分くらいが0点にくるカタチですね。

もう一人は、

同じく17世紀フランスの天文学者カッシーニさん。

土星の4つの衛星を発見し、木星の大赤斑(目玉みたいなデッカイ模様)を発見するなど様々な功績を上げられた方です。彼の名前を冠したNASAの土星探査機「カッシーニ」がついにその役目を終了ということで、少し前に大きなニュースとなっていました。

カッシーニさんは、

「惑星はたまご型の軌道を回っている!」と考え、

その「たまご型」軌道を数式で表したんですね。

数式はこんなカンジです↓

うーん、これまた複雑ですねェ。

グラフだとこうなります。aとcに入る数字によって、8の字を描く軌道から卵型へ変形するカンジですね。

デカルトさんは哲学者ですが、人文学なんかは全く興味を示さなかったそうで、数学の研究によって得られた明快な論理を哲学体系でも重視したからと言われています。またカッシーニさんも、人知の及ばない天文という分野にゆるぎない論理を見た結果、後半生ではあいまいな「占星術」を大批判しています。

そんな論理的な考えを持つ2人の偉人の頭脳から、「卵」を表す数式が生まれたのはとても興味深いです。


〇卵型は自然界になぜ必要?

そもそも自然界の『たまご形』はタテからもヨコからも衝撃に強い形状なのですが、

最大の目的は、

また転がってもまた元の場所に戻って来るカタチであるということ。

巣が高い所にあって、仮にころがっても戻ってくる、割れにくい形状なんです。

自然界でちゃんと意味のある、理想の形状なんですね。

(ちなみにヘビやワニなど低いところで暮らす動物のたまごは真ん丸〇です)

そのカタチに魅了される学者さんも実は多くいらっしゃいまして、他にもいろんな「卵型の数式」が研究・発表されています。


〇いろいろある!『卵型』の研究

また、『卵型』だから起こる物理現象に注目している研究も多く、

たとえば

「卵は高速回転させると重心が上方にシフトし、空中に浮き上がる」

というビックリするような工学研究や、

「ミルクなどの粘性液体のなかで卵を回転させると、卵殻に沿って液体がせり上がってくる」

など流体力学の観点から卵カタチに着目した面白い研究などもあります。

美味しい!健康に良い!

……だけじゃなくって、

その「カタチ」そのものにも自然の摂理の神秘、まだまだ面白い秘密が隠されている!

そう考えると実にロマンがありますね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:超電導と空飛ぶたまご | たまごのソムリエ面白コラム

(x2 + y2)2 – 2a2(x2 – y2) + a4 – c4 = 0

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

仕事柄、たくさんの卵を割る事があります。

「液卵」といって、一度にたくさんの卵を使われるお店さまに、あらかじめ卵を割って計量しておく商品です。

何千という卵を割りながらいろいろ試してみると、カラがまったく入らない&こぼさない理想的な割り方があるんですね。

スピードを考えないのであれば、


➀カラを真っ二つにキレイに割る方法

まず、卵の側面をコツンと当てて、ヒビをいれます。

軽くでけっこうです。

次に、クルンと回してその赤道上の180°反対側をまたコツンと当ててヒビを入れます。

すると……!

まるでカッターで切ったかのようにキレイなヒビが入り、スパッと卵が割れます。


②割るたびにちょっとこぼしてしまう対策

今日は目玉焼き!なんていう朝。

卵を割る際に、フライパンの端っこやボウル、鍋なんかへコツンと当てて割る方も多いかと思います。

僕も一人暮らしの頃いつもそうしていました。

でも‥‥‥意外とこぼれるんですよね。

割る際の力加減もありますが、コツンとヒビを入れたときにどうしても中身が漏れてこぼれてしまうことがあります。

あれ地味に手間なんですよね~。

さて、ちょっとした事ですが、これを防ぐ方法があります。

それは、

卵を持って、その上側を割る

ということです。

1)利き手に包丁またはスプーン、反対の手に卵を持つ

2)見えているたまご殻の上部を包丁の背でコツンとたたく

これだけです。

コンコンと割った面が下や横を向いているからこぼれるんですね。

上を向いてるとこぼれません。

やってみるとわかりますが、

気づかずにカラの破片が入っちゃう心配もしなくて良いので、おススメです。

ぜひお試しくださいませ~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご全般コラム 2021年04月19日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

良い天気が続きますね!

近くのお店にもツバメが巣を作っていて、なかなかかわいらしいです。

たまごと偉人のエピソード第23弾、今回は中国の王様です。


中国で最も古い王朝は「殷(いん)」と言います。

今から3200年くらい前ですね。

王様は「契(せつ)」さんという方で、

なんと、そのお母さんが水浴びをしていたときに、ツバメの卵をうっかり飲み込んだことでお腹に宿ったという伝説があります。

その昔は、今の鶏さんのように「卵を毎日産む鳥」なんていませんでしたから、卵自体がめったに手に入らない、とても貴重な食べ物でした。

ツバメがたまたま卵を落とすのを見て、

「あら、欲しいわ。」

「ちょっと、私が先にみつけたのよ。」

なんて、姉妹で取り合いっこをしているあいだにウッカリ飲み込んじゃったのです。

そして十月十日後に赤ちゃんが生まれ、これが非凡聡明ただものじゃない才能を持っている。長じて王朝をたて、王様になり天下を治めました。

めでたしめでたし。

そんな伝説ですね。


〇ツバメは縁起が良い鳥!?

古来中国や日本では、ツバメが巣を作るとその店が繁盛する・家が栄える、なんて言い伝えがあります。

ひとつには、前述の「王さま伝説」が広く伝わって「ツバメって縁起の良い鳥・たまごだよね。」と考えられていることがその理由。

加えて、ツバメは外敵のカラスやヘビから巣を守るために「人の出入りの多い所」に巣をつくります。

自然と「ツバメがいるところ」イコール「繁盛している店」になるわけです。

そんな習性が「ツバメと商い」をつなげているんですね。

そういえば中国発祥の十二支でも酉(とり)年は“商売繁盛”をあらわしますよね。

トリと商売、このあたりのイメージもつながっているような気もします。

 

〇古来の英雄は卵と絡みが多い!?

実は、

生まれに「たまご」が絡む英雄

って世界中に逸話がありまして、

この王様だけじゃなく、例えば韓国の高句麗の始祖「朱蒙(チュモン)」やビルマのパガーン朝王家の始祖さんも『卵から生まれた』という伝説があります。

他にも台湾、インド、フィリピン、ボルネオ、フィジー……特にアジア中心に「英雄が卵から生まれた」や「卵を食べたら生まれた偉人」という逸話がたーくさん残ってるんですね。

日本では奈良時代の名僧・行基(ぎょうき)さんが卵から生まれたという言い伝えがありますね。

面白いですね~。

でも、なんで卵なんでしょう?

これは、卵を「生命の源 = 聖なるもの」とする考え方と、

「英雄は他とちょっと違う生まれ方であるべき」という伝説的な考え方が合わさって

「卵がらみの生まれ」になったというのが有力な説。

医学的に、古代では貴重な精のつくたんぱく源だったから力強さのイメージ、という説もあります。

なんにせよ、古代の人の、卵イコール特別感という考え方から来ている伝説は、卵屋としてはすごく面白く感じます。

上記の写真は近くの遊園地で息子と撮ったものですが、そんな伝説の英雄たちにあやかって立派な人物になってくれると嬉しいですね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごを運ぶパック容器

これがないと僕達は仕事にならないわけですが、

この卵パックができて今年で100年と2年になります。

そもそも卵パックが発明されたのは、カナダの農場主が毎日納めていた卵に割れが多く、取り引き先のホテルとトラブルになっていたのを解決するためです。

最初にできたのは“紙製”のモウルドパック。衝撃吸収性がたかく、今ではちょっと高級なたまご商品に使われることが多い容器です。

そして、プラスチックのたまご容器。これができてからだいたい50年ちょっと経ちます。

こちらは包装工程の機械効率が良く、大量生産にも向いています。中身が見えるので売り場で安心、という声もあります。


〇特許やすごい機能が満載!たまごパック

あまりイメージがないかと思いますが、たまごパックって特許のカタマリなんです。

割れないような工夫、積みやすいカタチ、開けやすい仕組み‥‥‥、とにかくいろ~んな工夫が集まって今のたまご容器になっています。

たとえばプラスチック卵パックの上下側面についている凸凹の部分。

これは、たまごと外部との接点を極力減らすためのもので、外から衝撃が加わっても割れにくいようになっています。これがあると無いとでは、耐久性がゼンゼン変わってくるんですよね。

また、ちょっとすぼんだ形状になっていますが、これはコップのイメージです。

たまごは完全な楕円じゃなく、片方がちょっと細く、もう片方がちょっと丸みをおびた楕円になっています。とがった方を下に卵が入るとすっぽりと収まって安定するようになっています。

良くカンチガイされるのですが、「とがった方を下にすると保存性が良くなる」と言われるのはデマで、実際はどちらも同じです。とがった方を下にするのは容器に入れて運ぶための工夫。あくまで「輸送時の安定性」のためですね。(参照:たまごの上下で保存性が変わる・・・はウソ!【卵の迷信】 | たまごのソムリエ面白コラム


〇実はどんどん進化している卵パック

卵パックって、実はどんどん薄くなっているんです。わずか数年前と比べても厚みが減っています。ところが耐久性は逆に上がっているんですね。

ホラ、捨てるときにパックを潰すのってすごく大変じゃないですか?

これ、上記の凸凹構造や支え部分のかみ合わせ工夫なんかのおかげでして、以前ほどの厚みが必要なくなってきているわけです。

軽くなった分、数百数千パックの卵を輸送する事を考えると、割とバカにならない燃料費やCO2量の差がでてきます。

コストをかけずに環境に良く、卵が割れない状態で運ぶかの工夫が、容器を進化させているわけです。

普段買って帰ったら捨てられるだけのたまご容器、良ければぜひマジマジと観察してみて下さいね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , おいしさ雑学 2021年04月13日