こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
英国最大手、世界十数か国に拠点を持つ小売店大企業のテスコという会社があります。
英国ガーディアン紙で先日、こんな記事がありました。
White shelled eggs are selling in Tesco for the first time in 40 years | The Guardian)
(テスコ40年ぶりに白い殻付き卵の販売開始)
コロナで卵の小売り需要が伸びた事に対応して、この40年間で初めて英国の系列スーパー全店で白いカラの卵を販売する予定、とのプレスリリースです。
面白いですね。
裏を返すと、今までは白い卵なんてほぼ売ったことが無かった、という事です。
実は、英国で「卵」と言えば「赤いカラの卵」の事なんです。
イギリスにいる4000万羽の採卵鶏のうち、白い卵を産むニワトリさんはわずか30万羽。
1%もいないんですね。
すなわち99%が赤卵、ということになります。
う~ん、日本と真逆、いやそれ以上ですね。
英国で現在1%だけ生産されている白卵は、ほぼ業務用のみ。
それがコロナ禍でレストランが軒並み閉店休業しているため、
業務用だけではさばききれなくなった
そのため苦肉の策として白卵の店頭販売に踏み切ったのだそうです。
生産量1%の業務用卵が消費しきれない状態というのはかなり深刻ですが、
それに加えて小売店では一般のお客様による卵パニック買いが数ヵ月前から起こっていまして、連日スーパーで売り切れになっています。
「とにかく棚に卵をそろえないと!」
という対策ですね。
むしろやっと一般販売に踏み切ったカタチです。
逆に言うと、そこまでの事態じゃないと
「白卵なんか売れない」
という認識という…
すごいですね……。
でもじつは、英国がそんな赤卵好きになったのは、
歴史的に見ると「あたりまえ」だったりします。
〇そもそも鶏卵は赤たまごしかなかった
もともとニワトリさんは赤たまごしか産んでいませんでした。
セキショクヤケイ、という東南アジア発祥の鳥でして、
地面やワラなどに巣を作っても、卵が目立たない、
そんな色、すなわち「赤色」の殻だったのですね。
もし、白い殻の卵だったら、
土や草の中でもめっちゃ目立ちますよね!?
白い卵を産むニワトリは比較的新しい種類でして、
近年の育種の中で生まれてきたものが多いのです。
対して、赤卵はやや古い系統、原種に近い鶏種が多い。
ヨーロッパは畜産の歴史が古く、
また近代でニワトリさんの量産飼育を始めたのも、
産業革命の開始を受け、イギリスは非常に早かったのですね。
すなわち、白いニワトリじたいが量産向けとしてデビューする前に、
赤卵を産むニワトリが英国で普及したのです。
なので英国では、
たまご = 赤いカラのたまご、なのです。
1970年代に英国でも白卵の導入が始まり、人気を得た時もあったのですが、
「やっぱり赤い卵の方が健康的だよね。」
「いつもの方が好きだわ。」
…という声に押され、10年経たずにほぼ無くなってしまいました。
うーん、なかなか興味深いです。
さすが、「ひいじいさんの代から同じ朝食メニューを食べているのが自慢」
だったりする、伝統を重んじる保守的な国、ともいえますね。
ちなみに、その英国から独立したアメリカでは白い卵が主流派です。
また米国式を導入して昭和に量産体制を確立した日本も、ご存知の通り「普通の卵」と言えば白いカラのたまごです。
〇白卵にもメリットがいっぱい!
ただ、比較的新しい品種である白い卵にもメリットが沢山ありまして、
・おとなしい
・産卵率が高い
・体が赤鶏より小さく飼いやすい
・たまごの香りがスッキリしている
など良い点も沢山あるのですね。
体が小さい、ということは同じ空間でストレスを受けにくくエサも少なくてすむので、飼い方によってはコストメリットも出ます。
また、香りの良さは、他の食材の香りを活かしやすいですから、洋菓子や洋食でも、メニューによっては赤卵より白卵の方が美味しくなります。
白卵が決して劣ってるわけではないのです。
ちなみに赤卵も白卵も栄養価は同じです。(同じ飼育方法の場合ですが)
料理別専用たまごをお届けする私達も、料理の向き不向きによって白い卵だったり赤い卵だったり作り分け、使い分けをしております。
選択肢が多い事はとてもうれしいことですし、
「料理の美味しさ」という観点で、
英国含め、世の皆さまにはぜひ!さまざまな卵を楽しんでもらえたらうれしいです。
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。
(関連:なぜ!?未成年者の卵購入が禁止に!?【英国・米国】 | たまごのソムリエ面白コラム)