小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

ソムリエ日記 記事一覧

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

緊急事態宣言を受け、全国「籠城」の一ヵ月ですね。

どこへも出かけられないことから、自宅でできるニンテンドースイッチなどのゲーム機がどこで探しても売り切れなんだそうですね。

先月発売のゲーム「あつまれ!どうぶつの森」は世界で700万本の大ヒット、また自宅で運動できるゲーム「リングフィットアドベンチャー」は空前の品切れ状態だそうです。

すごいですね~。

さて、ニワトリさんが人類に飼われるようになって4千年以上経つのですが、実はずいぶん長い間、ニワトリは「食べもの」では無かったのです。だいたい千年~二千年くらい。

食べる為…ではなく、

どこへも行けない時にヒマをつぶせる「娯楽」、

そして「生活道具」だったのです。

まさに今の「ニンテンドースイッチ」と同じ!

もともとニワトリさんは「赤色ヤケイ」という東南アジア中心に生息していた小さな鳥。

獰猛で飼いにくく、肉もそんなに付いてなかったのです。

もっとおとなしくて飼いやすく、肉も多くて美味しい鳥はいくつもいました。

いや、そもそも「鳥」のお肉って家畜には向いてなくって、量産飼育されはじめたのが18世紀くらいからなんです。

それまでもモチロン食べていましたが、

鳥って、ウシや豚と比べて体が小さい=内臓の割合が大きいので、腐りやすいのですね。

遠くまで運べない。

なので、食用の家畜としてはそれほどメリットは大きくなかったのです。

たまごも、毎日じゃなく春だけしか生みませんでしたし。

そんなニワトリさんがなぜ人類と共に時を歩むようになったかというと、ニワトリさんが抜きんでていた価値、それが「正確な時間」と「闘うこと」だったのです。

「正確な時告げをする」

「闘鶏を楽しむ」

この2つの価値が圧倒的に強かった!

季節で夜明け時間も変化する昔において、「朝の同じ時間を知らせてくれる」ことはモンノスゴク重要だったのです。

また、飼うのにはイマイチな「獰猛」という性質、

戦いを楽しむという点ではすばらしい価値になったのです。

古代ギリシャでは軍神アレスのシンボルは「ニワトリ」でした。闘鶏から来る「勇猛さ」を表していたと言われます。

インダス文明でも闘鶏を表した土器が出ており、

また中国でも食について書かれるずっと前に、紀元前10世紀ごろにはすでに「闘鶏」について文献にでているんですね。

大事に育てて戦わせる。

ポケモンみたいなカンジでしょうか。

日本でも宮中では3月3日は千年以上前から闘鶏を行っていました。

いまだに闘鶏大好き国なタイでは、3百万人が参加しています。

ニワトリ=「娯楽」の図式は、

食の歴史よりもずっと古いのです。

いや、もちろん年とって戦わなくなった鶏さんは食べられたりしていました。でも老鶏じゃ肉も硬いし…最初は美味しいから普及した、ってわけじゃないんですね。

身近にいる貴重な娯楽として・また貴重な時告げのために、鶏さんは世界中に普及して長い長い年月の品種改良のあと、美味しい食を支える存在となりました。

現在では世界で110億羽!もの鶏がいます。

牛・豚が10億頭前後ですから、圧倒的ですね。

強みを活かしつつ、時間をかけて新たな価値をつくりだしていく。企業も同じかもしれませんね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(参照:「ニワトリ 愛を独り占めにした鳥」光文社新書)

カテゴリー | ソムリエ日記 , 鶏さん・鳥さんのコト 2020年05月20日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

世界最大の卵、って何の鳥か知ってますか?

「そりゃダチョウだろう。」

とおっしゃるかと思います。

実は、ニュージーランドの国鳥・キウイ

あのカワイイ鳥の卵は、ある意味「世界最大」なんです。

キウイの卵はお母さん鳥と比べた大きさ』が世界一!

例えばニワトリさんの場合

だいたい体重が2kgほどで、タマゴは平均60gちょっと。

お母さんニワトリの3%くらいの大きさですね。

この比率、世の中のあらゆる卵でだいたい同じでして、

どの鳥も、親鳥さん体重の1~8%になります。

ダチョウのタマゴは1.5kgの重さがありますが、

お母さんダチョウは120kg、卵は体重比わずか1%です。

ところが、キウイさん!

お母さん鳥の体重はニワトリさんと同じく2kg程度ですが、

卵の大きさは何と!500グラム超もあります。

体重比で25%を超えるんですね。

うーん、すごい!

人間で言うなら、15kgほどの赤ちゃんを産む計算になります。

「小さく生んで大きく育てる」

という言葉がありますが、完全にその逆ですね…。

↑はウチの息子が15kgくらいのころですが、こんなんなるまでお腹の中にいるなんて……!

レントゲン写真で見ると、卵を産む前のキウイさんお腹の中はとんでもないことになっています↓

ほぼたまご!

いったいナゼこんなに大きな卵を産むのかというと、

元々キウイさんはダチョウやエミューのように大きな鳥だったそうです。それが外敵がいない中でだんだんと燃費の良い小型へと進化(?)していったのだそうな。

で、卵だけがそのままのサイズで残ったんですね。

ちなみに進化したことで、

羽が無くなりました。飛ばないので。

目もほぼ見えなくなりました。

その代わりに嗅覚がめっちゃ鋭くて

足もメチャクチャ速いんだとか。

かなり思い切ったステータスの割り振りですね。

不採算部門を切ってベンチャー化した元大企業、みたいなカンジでしょうか。

 

ダンナもスゴイぞ!キウィの子育て

そして、こんなに大きくなるまで苦労して産むのに、生まれてもまだ「たまご」なんですね(当たり前ですが…)

そこから温めて、ふ化させないといけないわけです。

しかも、

卵がふ化するまでの期間がモノスゴク長い!

ニワトリさんなら約21日ですが、キウイはなんと75日!

2カ月半も温め続けないと生まれません。

ただ面白いことに、温めるのはオス♂です。

ニュージーランドには「キウイハズバンド(キウイの夫)」という言葉がありまして、家事や子育てを積極的に手伝ってくれる夫のことをこう呼びます。

うーん、夫婦でスゴイんですねェ。

ぜひ世の夫の皆さまはキウイを見習って家事子育てに積極的に勤しんでみるべきですね

コロナ禍の自粛中は特に。

キウイのように、

世界最高!?の立派な子供に育ってくれるかも……!?

 

〇たまご屋として気になる!キウイ卵の味は…?

ステキな夫婦話をした後にどうかと思いますが、やはり卵屋としてはキウィ卵の味がきになります。

現在キウィはニュージーランドの国鳥なので、卵も親鳥も食べるのは法律で禁止!です。残念。

ただ、カンタベリー博物館の自然史担当シニア・キュレーターで、『Field Guide to the Birds of New Zealand』という専門書の著者でもあるポール・スコフィールド博士によると、キウイさんの肉と卵は「おそらく美味しくないだろう。」との事です。

仕事柄、キウィさんのはく製を何度も作られたそうですが、脂肪が多く非常に土っぽい腐敗っぽい香りがとても強く「ハッキリ言って、食べても不愉快な味だと思う」そうで、おそらく土中の虫などを主食にしている事が原因だろうと推測しています。卵の味は肉以上に食べるモノの影響を受けますので、たまごも味は期待しない方が良さそうです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:こんなにある!世界で食べられている鶏サン以外の鳥卵10種 | たまごのソムリエ面白コラム

(関連:1並びの日にちなんで世界一たまごを紹介します その2 | たまごのソムリエ 面白コラム

(関連:超めずらしい!哺乳類にも卵を産む生き物がいる|たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2020年05月18日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

中国語で「煮」というと、文字通り「煮る」ことを意味しますが、

「烹」という言葉もあって、

これは「煮る」と「油で揚げる」の両方の意味があります。

訳者さんが、少々戸惑う事もあるのだとか。

ゆで玉子の料理に、

「虎皮蛋(フゥヒイタン)」なる料理があります。

これは、ゆで玉子をサッと素揚げしたもので、表面が香ばしく「虎の皮」みたいになっているからそう呼ばれるのだそうです。

細かな隙間が表面にできるため、

ダシやスープがとても良くしみこんで、

とっても美味しいんですよね。

この虎皮蛋は中国料理なのですが、

実は熊本県の郷土料理でもあります。

昔むかし、熊本に移り住んできた中国の料理人さんが広めた、太平燕(タイピンエン)という春雨スープに欠かせない玉子料理なのです。

面白いですねぇ。

この料理、たまごを煮てさらに揚げるわけですからまさに「烹」の料理ですね。

そういえば日本では、

カウンターでこじんまりと楽しむ和食のお店を「割烹」と呼びます。

煮たり揚げたりする料理がメインだからなんでしょうか?

この虎皮蛋、中国ではホイコーロー的な「甘辛い味付け」が主ですが、日本熊本式のスープ入れとはまた違う魅力とボリューム感があって、とっても美味です。

ちょっとひと手間の料理ですが、ぜひこういった新メニューも面白いのではないでしょうか。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

本日はちょっと古いたまご話を。

イタリアの古典物語に
「セレンディッポの三人の王子」(1557年)
というものがあります。

セレンディッポ(スリランカ)の王子達が旅をし、知恵と工夫で様々な事を乗り越えハッピーになる、というお話です。

その中に、卵のエピソードがあります。


インドの女王に会った時の事です。

3王子の末弟に女王が、謎かけを出しました。

『ここに5つの卵がある。

コレを割ることなく、
私と大臣とあなたの3人で
均等にわけるのじゃ。

できるか?』


うーん……、
ちょっとムズカシイですねェ。

サイズが違う卵なら、
個数が違っても
重量で均等に分ける
こともできるかもしれませんが…

あなたなら、どうしますか…!?


この質問を聞いた王子は、

5つのたまごの内、
3つを女王の前に置きました。

そして

1つを取って大臣の前に、

最期の1つを取って、
自分の前に置きました。

 

「女王様には3つ。

私と大臣はすでにズボンの中に
2つのタマゴを持ってますので、
あと1つずつ。

これで3人の“卵”は
均等になりました。」

 

未婚だったインドの女王は、
顔を赤らめながらも
その答えに満足したそうな。


・・・・・・というお話しです。
いかがでしょうか。

うん、下ネタですね。

女王に理解があって良かったですが、

機嫌が悪ければ投獄
されていたかも
しれませんね。

 

ステキな偶然に出会う能力「セレンディピティ」

大衆向けだったこともあって
下世話なネタがいくつもある物語ですが、

この「セレンディッポの3人の王子」
お話からひとつ、

人生を幸せにする
ステキな“言葉”が
生まれました。

タイトルに由来して
セレンディピティ
といいます。

 

『出かけた先で偶然大ファンの芸能人に出会う』

『出張先で思いがけずステキなお店を見つける』(孤独のグルメ)

『困っているおばあさんを助けたら偶然大金持ちの取引先だった』(サラリーマン金太郎)

 

こんな風に、

うわ!たまたまで
こんな幸せな事に
巡り合うなんて…!

……という偶然って、ありますよね?

 

「予想してなかった幸運に会う」

そんな“能力”が「セレンディピティ」です。

 

失敗作を一晩放っておいたらできた
「ポリエチレン」
の発明や、

航空機用レーダーの使用中に
おやつのチョコレートが
とけちゃった事でできた
「電子レンジ」
などがコレですね。

 

「三人の王子」の物語では、
道の片側の草しか食べられていなかった事から
「片目のラクダが前を歩いていた」
と推理し、
その事で「意外な幸運」に出会います。

ポイントは、
ただのラッキーじゃないということ。

その偶然の幸運を得るだけの才知が
あるからこそ、意図せず幸運に出会える。

上記の「ポリエチレン」や「電子レンジ」も、
ぼーっとしていればその発明に気づかず
捨てちゃって終わりだったでしょう。

 

棚ぼた、という言葉がありますが、
棚の下にいて上を見てない事には、
ぼたもちを食べられないですよね。

普段から気づき、考え、
またチャンスのある場所へ行くことで、
予想しない幸運に会える能力を磨く。

 

女王に「卵のなぞかけ」を出される、
なんてことは無いでしょうけど、
ムズカシイ相談を頂き
それが幸運なチャンスにつながる事は
僕の人生にも大いにありそうです。

 

三人の王子に習い、
英知と気づきを磨いてまいります。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:グリム童話の「熱いたまご」 たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの歴史・文学・文化学 2020年05月11日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

つい先日、献血に行ってきました。

半年に一回の習慣です。

僕は仕事柄、毎日たまごを食べます。

メニューの試作や趣味、開発、品質チェックなどで多い時で十数個のたまごを一日に食べることもありまして、計算してみると、たまご屋の3代目を継いでからすでに5万個以上のたまごを食べ続けていることになります。

ところで、医学研究発表によると、

卵を食べると血中のコレステロール量は下がります

卵自体にはコレステロールは比較的多く含まれるのですが、

コレステロール総量自体は大きな問題ではありません。

なぜなら人体に必要なコレステロールの7割は体内で作られているからです。

事実、数年前に厚生省はコレステロール摂取量の上限撤廃をしています。

ただし、血中に多量のコレステロールがずっとあると、その油分が血管中で邪魔をして血流を阻害するなど、健康にマイナスな面もあるのです。

たまごの黄身に多くある「コリン」という物質に

両親媒性という油とも水とも親和する効果があるため、

血管中にこびりついているコレステロールを包み込んでミセル化し、肝臓や細胞へコレステロールを片づけてくれるのです。

いわば、血管の掃除屋さん!

なので、血管を狭めてしまう……なんていうリスクを、卵を食べると低くできる、とされています。

下記は僕が半年に一度やっている献血の結果ですが

僕の血中コレステロール値を見ると・・・

少し見にくいですが、基準の線が140~260ミリグラム/dlです。

毎日これだけ卵を食べているのに、

コレステロール値は標準より低い!

うーん、ステキですねェ。

僕はくいしんぼうなので、いくら卵が健康に良くても摂取カロリー自体が多いので、そのヘンをもう少し改善しないといけません。料理の塩分もですね(汗)

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの健康情報(研究など) 2020年05月8日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

スペインの伝統的お菓子に「サンタテレサの黄身」(yemas de Santa Teresa)なるものがあるのをご存知でしょうか。

1800年代中ごろにアビラという町で生まれ、今ではスペイン全土で親しまれているお菓子です。

砂糖を溶かしたシロップと卵の黄身を合わせ丸めたお菓子で、見た目も固ゆで玉子の黄身だけを取り出したような色とカタチをしています。

作り方はシンプルですが、とってもクリーミーで卵の風味と甘さがすごくマッチしていて美味!です。

修道院生まれのお菓子なので、スペインの修道院改革を進めたアビラ生まれの聖女・聖テレサさんにあやかってその名前がついているのだとか。

なぜ修道院でお菓子が生まれたのかというと、

むかし昔、修道院ではワインを造り販売していたのですね。

当時のやり方でワインから不純物を取り除き、澄んだお酒にするために使用するのが「卵白」です。そうすると、必然的に大量の黄身が余ってしまう…。

コレを利用しよう!

…という事で生まれたお菓子なんです。

日本の新潟や東北・関西の酒どころで、酒造りで残った酒かすを使った「粕汁」や「粕漬け」が流行ったようなものでしょうか。

ポピュラーすぎて、「イエマ(黄身)食べる?」みたいに省略しても伝わるのだとか。

たまご屋としてはテンションが上がるお菓子です。

作り方の動画です↓

割と簡単ですので、

メニューの関係でちょっと黄身が余った時にでも、ぜひ作ってみて下さいませ。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご全般コラム 2020年05月6日