小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

ソムリエ日記 記事一覧

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

今回は、まったく卵とは関係のないハナシを書きます。

時期は書けないのですが、

骨髄移植のドナーになりまして、適合される方がいらっしゃったとの事で移植提供をしてきました。

たまごの話では無いのですが、世のご理解が進むべきと思い、感じた事を少し記します。


〇いきなりのショートメッセージ連絡

ある日突然、コーディネーターさんから携帯に短いメッセージが来ます。

こばやしは携帯ショートメッセージはほとんど使ってませんので、最初の感想としては正直なところ

「うさんくさい」

でした。スパムか何かじゃなかろうか、と。

ところが、書面&電話でも連絡が来まして、「これはマジなやつだ。」と気づいたのです。

「え!?ホントに適合者にえらばれるもんなんだなぁ。」

という驚きが大きかったですね。


〇めっちゃ厳しいメディカルチェック

日程調整をしまして、指定の病院に行き、担当の先生から説明を受けます。

この時点では、ちょっとビビっていました。

ちなみにコーディネーターさんいわく、この時点まででお断りされる方も多いのだとか。

そして、入念なメディカルチェックがあります。

ちょっとでも体調に懸念があれば、ドナーには選ばれません。

例えば僕は腰痛持ちなんですが、

3時間の摘出に同じ寝そべった姿勢を取るからドナーは難しいのでは?、といった視点で外科の先生と共にわざわざ細かな検査をしてもらったり、

ある種の食物アレルギーでもドナーになれなかったり、

僕がたまたま皮膚にかゆみがあって塗り薬を使っていたのですが、その種類によってはドナーがダメだったりするそうで、

あまりにチェックが厳しいので、

「ドナーにさせないぞ、と思って荒探ししてるんじゃないのか。」なんて思うくらい厳しい目線で診てくださいます。

いや、だって相手さんは命がかかってるんですよ?

些末なところでドナー候補が却下されたらガッカリどころじゃないでしょうし(理由は伝えられないでしょうけども)、

ちょっとくらいの支障なら命に代えられないんじゃないか…、多少の見切りでやっちゃっても良いのではないかなぁ‥。

そんなことを感じるくらい、厳しい目線なんです。

これなぜかと言うと、

先生いわく、

「ドナーさんは何のメリットもないのに提供をするのだから、提供者側のことを100%考えた万全の体制じゃないとダメ。」

なんだそうです。

つまり、提供を受ける患者さんのためではあるけども、ドナーの可否を決める際には100%提供者の側にたって厳しくチェックしてくださる。

ある意味とても安心感がありました。

あと、「骨髄移植のリスク」についてはかなり詳細なご説明がありました。

過去のリスク例や、実際の移植時にどういった処置をするのかなど、細かく説明があります。


〇満を持して入院

いよいよの移植となります。

前日に入院しまして、最終の体調チェック。

根が楽天的な事もあってか、「健常なまま入院する」という事態にちょっとワクワクする気持ちもありました。

ちなみに今はコロナ禍なので、病室のあるフロアに入ったら最後、出られません。下の売店にも行けなくなるので、PCなど仕事道具と溜めていた小説なんかのほか、飲み物なんかを買い込んでから入りました。

手術時は、うつぶせの体勢なんかを細かくチェック&調整してもらって、

そして、移植。

全身麻酔なので実感としては一瞬で、

気がついたら終わってました。

直後は確かにキズぐちが痛いんですが、ウンウンうなるほど痛い!‥‥‥ということもなく、その日の夜にはフツーに食事もできました。

翌日も、キズにベッドの端なんかが当たったら「!あいてて!」となるくらい。


〇思った以上にすぐ元気になる

翌日にはほぼ普通通りに回復しました。ただ、起き上がるとちょうど腰のキズ口が当たって痛むのと、看護師さんや先生が細かくチェックをしてくださいますのでなんとなく取引先さんとの電話などしにくくて、思ったほど仕事はできませんでした。

なので、寝転がって「積ん読」になってた本をずっと読んでました。


〇すごい手厚いチェックをしてくれる

たまたまなのか、色んな部署が絡むので当然なのかはわかりませんが、

担当してくださる先生がとても多かったのが印象的でした。

なんと6人。ご担当の看護師さんよりも多い。

術後も入れ替わりでチェックしてくださって、とても恐縮でした。


〇大変だったこと

もし、直前に僕がインフルエンザやコロナになっちゃったら‥‥‥これが一番気を使いました。

移植を受けられる方は、直前一週間前から「もともと持っていた骨髄機能を完全に失わせる施術」をしてから移植に臨むそうで、つまり一週間前からまったく予定の修正がきかないんですね。

もし、何かの要素で移植を延期にしてしまったら‥‥‥

自分が油断をしたら、誰かの命に係わる。

これはなかなかのプレッシャーでした。


〇終わってみて今感じること

もうとっくに移植のキズも癒えてピンピンしておりますが、時々ふと考えます。

家族ですら4人に一人の適合率

他人では数万分の一の確率。

一生お会いすることも無い、

奇妙で、

命にかかわるご縁。

もしかしたら、逆の立場でのつながりだったかもしれないんですね。

少しして、患者さんからお手紙をいただきました。

詳細を書くことはお互いに禁じられているのですが、

それでも、

本当に命が助かるかどうかの、

瀬戸際だった気持ちがとても伝わる内容でした。

終わってみて感じるのは、

ただ、お元気になってください!

ホントそれだけです。

考えてみれば、僕は商売でも

直接お会いすることない

たくさんの方に助けてもらっているんですよね。

数万分の一のご縁がまるで網のように重なって

助けてもらい、今があります。

そういった事に気づかされる機会でもありました。

そして、健康的に生きないといかんなぁ、とも強く感じましたね。

引き続きドナーとしての登録もありますし。

しょうもない不摂生で誰かの命が助かる機会をふいにしてしまったら、とても悲しいことだと思うんですよね。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , ちょっとつぶやき 2021年08月6日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

ずいぶん前ですが、出張中に居酒屋で見かけたもの。

鶏さんは飛ぶのがヘタな事で人間との関係がつながって、

いまでは世界に110億羽もいます。

これはこれで、鳥種のなかでどっしり構えたトップクラスの繁栄種と言えます。

全く飛ばない鳥キウイもそうですが、

地面近くに生息する事は、エサにありつく機会も増えますし気候の影響も比較的うけにくいなど、メリットもたくさんあります。

僕たちとおなじで、

何が人生の良さにつながるか、分からないんですね~。

となりに焼酎「もぐら」が貼ってあるのも狙ってるのでしょうか。

面白いです。

カテゴリー | ソムリエ日記 , ちょっとつぶやき 2021年08月3日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまご・鶏のことわざ第69弾、今回はイタリアから。

<年老いた鶏から美味しいスープができる>Gallina vecchia fa buon brodo


年を取ると経験も増えるし悪くないぜ!みたいなカンジです。

日本でも「一日の長」なんて言い方をしますね。

イタリアではとてもポピュラーな表現のようで、この言葉をタイトルとする古い歌もあります。

またずいぶん前ですが、ロードレース世界選手権9連覇・史上最強のライダーと呼ばれるバレンティーノ・ロッシさんが、このことわざが入ったTシャツを着て「まだまだやるぜ!」というメッセージを伝えた事で話題になりました。

ちなみにこのことわざはホントで、

年を経た鶏ほど、

肉は硬いですがアミノ酸量が増え、

うまみが多くなります。

シチューなど煮込み料理にするなら絶品なんですね。

日本では「廃鶏」なんて呼ばれてあまり用いられていませんが、肉文化の長いヨーロッパでは逆に年老いた鶏肉の方が高いこともあるくらい。

僕たちも年を経るほど旨味が増える、そんな人間でありたいですね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご・鶏のことわざ 2021年07月20日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

ブルガリアのたまごジョークご紹介です。


ガブロヴォ市に住むヤツラは、

卵に蛇口を付けているんだ。

丸々一個の卵を使わずに、

必要なときに必要な分だけ使えるようにな!


ジョークの解説は野暮ですが、

少し説明しますと、

このガブロヴォという町の住人は、超ケチで有名なんです。

そして、それをネタにしたジョークがめちゃくちゃありまして、

ついにはこのガブロヴォ市は「ジョークの首都」なんて呼ばれるようになっているんです。

他にも、


ガブロヴォじゃぁ、民族舞踏は必ず靴下で踊るんだ。

音をたてないようにすることで、

隣町から聞こえてくる音楽で踊るためだぜ。


なんてジョークや、

他に有名なジョークでは、


ガブロヴォのネコはみんなしっぽを切られて短いんだぜ。

しっぽが短い分、ドアの出入りが早くって部屋の暖気を逃がさねえんだってさ。


なんてのがあります。

あまりに有名なジョークなので、ガブロヴォ市のマスコットキャラクターは「しっぽのない猫」になってます(笑)

ちなみに町にはこれらのケチジョークにまつわる美術品を集めた「ユーモアと風刺の博物館」まであって、毎年ユーモア国際博覧会やジョークの言い合い大会まで開かれているそうです。

なかなか逞しいですね。

日本でアンケートを取ると、大阪が最も倹約家のイメージが強いそうですが、ガブロヴォ市とは商魂の逞しさなんかでも共通しているような気がしますね。

ガブロヴォは工業も盛んで活気があり、また風光明媚な自然も楽しめるステキな街だそうで、コロナ禍が明けたらぜひ行ってみたいですね~。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , 食べ物ジョーク・おもしろ 2021年07月16日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

TOKYO MXテレビ「バラいろダンディ」様にて、

当ブログの記事をご紹介いただきました!

ダンディなアニマルを紹介する!というコーナーで、今回の主役はニワトリさん。

たまごや鶏のクールなところを紹介する、としてウチのブログが紹介いただけたんですね。

うれしいです。

ニワトリさんのカッコいいところがコンパクトにまとめられていて、とってもワクワクでした。

当ブログの目的も、ご飲食店様のお役に立つことと、とにかく卵の魅力を伝えたい!というのが一番ですので、その一助となりましたこと、とっても光栄です。

カテゴリー | ソムリエ日記 , 取材・掲載・ご紹介 2021年07月15日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

「哲学の卵」というものをご存知でしょうか?「哲学者の卵」とも言われます。

これ、「なりたての哲学者」とかいう意味ではありません。

実は“錬金術”の道具なんです。

錬金術、つまり黄金を創り出す術で、また不老不死になれる「賢者の石」を創り出すための学問で、16世紀ごろに大流行しました。

その「黄金」や「不老不死」をつくるためのスタート、

一番とっかかりに、必要な材料を水晶の丸いビンにぜーんぶ入れて封をするんです。そこから始める。

これを「哲学の卵」と呼んだのですね。

いわば錬金術の『スターターキット』です。

無から有を生み出すような神秘的研究の素材セットを、『生命の源』としてすべての栄養素が入った「卵」に例えるのは、中々興味深いですね。

「哲学」っていうと文系イメージがあって、実験のおハナシで出てくるとなんだかヘンな気がしますが、そもそも「この世の真理」探究はすべて哲学の分野。

昔むかしは科学も数学も知的探求学問はみーんな「哲学」に含まれてました。

なので「哲学のたまご」。


ちなみに

「世界は卵から生まれた」

‥‥‥という信仰が広く欧州・アジアに根付いていまして、

「哲学の卵」はこの世界たまごのミニチュア再現版。

『原初の混沌が入った“”から世界が生まれた』

というイメージを反映してできた実験方法です。

そういえば先日ご紹介したフィンランドの民話でも、卵から世界が生まれていましたね。

「錬金術」は現代でこそ「ムリ」とされていますが、当時の最先端を行く研究でして、後の「現代化学」の礎となっています。

例えば

ビーカーやフラスコ・試験管

なんかはこの錬金術から生まれた器具ですし、

あの万有引力アイザック・ニュートンさんも錬金術をずっと研究していました。

「空気からパンを作り出す」と言われたアンモニア生成法「ハーバー・ボッシュ法」も、錬金術からの発展です。

うーん、そう考えると、

「哲学の卵」から、数百年を経て現代の豊かな生活が生まれた、とも言えますね。

すごい。

ただ、ホンモノの卵だって負けていません。


『いいですか。親愛なる友よ。これほど稀なる宝を炉や蒸留器から創り出した錬金術師はいないのですよ。それをあなたは雌鶏から得ることができるのです。あなたが労働と喜びを結びつける術を知っているのならば。』

これは17世紀フランスの農学者、ブリュダン・ル・ショワスラさんの言葉。

鶏のたまごは錬金術に匹敵するくらい素晴らしい!という意味ですが、これも上述の「哲学のたまご」というものがある事を踏まえると、より深い意味合いになります。

同じ時期の研究→錬金術師よりも、一生懸命育てた鶏さんと農夫の方がすごい!という農学者としての自負が感じられてステキですね!

ボクも完全同意です。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:卵じゃなく時計をゆでたニュートン | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , 面白たまご話 2021年07月12日