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ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

ソムリエ日記 記事一覧

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

気温の高い夏場は、ご家庭でも生モノの取り扱いに神経を使う時期ですね。

さて、先月インドの大学にて、たまごにふりかけるだけで劇的に保存性を高めることができる『バイオシールド粉末』が開発されたとの発表がありました。

粉末をお湯に溶かし冷ましたあと、卵にふりかけるだけで効果を発揮するとのことで、すでにインド各地の養鶏会社には好評をはくしており、大規模な噴霧マシーンもすでに開発中だとか。

開発したグル・アンガド・デヴ獣医大学(GADVU)のマニッシュ・チャトリ博士によると、

「卵には約一万個の穴が開いていますが、この粉末はそこにシールドをつくることで、卵に夏場でも30から35日の保存性を持たせることができるんです。」

とのことです。

ちなみにこの粉末は骨や乳成分などの天然成分のみからできていて、食べても安全なんだそうな。

うーむ。

本当だったらなかなかスゴイ技術ですねェ。

なるほど、卵のカラに微細な穴が開いているのはそのとおりで、

結露などが起こることで表面に繁殖した菌が穴から侵入するリスクがあるのも事実です。

しかし、お湯に溶かす、という事は水に溶けちゃうわけですよね。

食べても大丈夫ということは有機成分。

結露してコーティングがとれちゃったりしないんでしょうか??

 

◆同様の技術は日本にもあったけど・・・・・・◆

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実は、似たような試みは日本でもされておりまして、35年ほどまえからすでに、表面を油や多糖類で薄くコーティングする研究がなされていました。

でも、

黄味の盛り上がりなどは長くたもたれるものの、菌的な保存性はコーティングしない卵と大して変わらなかった

という結果だったんですね。(注1)

じゃあ、インド製たまごシールド粉末・・・、効果のほどはどうなのか・・・・・・!?

 

◆そもそも付いてる!?驚異のたまご防菌効果!◆
たまごには、4層のバリアがもともと付いています。

表面にクチクラ層、卵殻、内側に2層の卵殻膜があって、菌に対してもバリアとなっているんですね。 これと、溶菌作用のある“白身”によって、卵の黄味がばっちり守られるわけです。

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ただし、たまごを洗浄することで、残念ながら表層にあるクチクラ層が削り取られてしまいます。

この、失った第一層の代わりをしてやろう、というのであれば、上記の『バイオシールド』は有効かもしれません。

日本の場合は、産み立てからほどなく売り場に届く流通システムが確立されていますが、物流に加え電力事情も決して良いとは言えない地域が多いインドでは、暑い夏場において長期間持たせられるかどうかは大きな課題なんだと思います。

今後、どのていど普及していくのか興味深々です^^

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(注1:Imai,C.,Poultry Sci.,60,2053(1981))

(参照:“Now, a shield to increase shelf life of eggs”The Tribune, Chandigarh, India)

 

 

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2016年05月14日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

『卵』って漢字は茹で玉子っぽいし、もともとそこからできた文字なんじゃないの!?」

・・・・・・という思い付きを当ブログで以前挙げさせてもらったことがあります。

(たまごのソムリエコラム:「元旦と元日の違いって?」)

その後、よくよく調べてみたら、まさしくその通りでして、たまごの見た目から「卵」という文字ができたのだということを知って、ちょっとビックリしております。(出典:新漢語林)

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ただし、現代中国ではという字は魚や虫も含む広い意味のたまごを指して、鳥のたまごは「」の字を当てるのが通例です。「蛋」の字の方が虫の字が入ってるのにちょっと不思議ですね。

ついでに「鶏」の漢字はというと、これも「見たまま」を表しているのだそうです。

左の「夫」っぽい部分は「奚」という形だったそうで、糸っぽいところはつなぐ糸(ひも)を表し、下の部分は「飼育する人」をあらわすのだとか。右の「鳥」が飼われているニワトリさんでして、ようするに『昔から人に飼われていたこと』が良く分かる漢字になっているようですねー。

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以前も書きましたが、中国では古来より「犬とニワトリさんは人里の象徴」でもありました。漢字の成り立つ頃からの長い関係、人と鶏さんの歴史にロマンを感じますねー。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , おいしさ雑学 2016年05月3日

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

たまごが出てくる映画の名シーンご紹介、第7弾です。

今回はトムクルーズ主演のヒット映画「カクテル」。1988年公開です。日本公開は翌年ですが、あまりのカッコ良さに公開直後バーテンダー養成学校への申込が殺到したという逸話があるくらいです。

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エリートビジネスマンを目指してニューヨークに上京したブライアン(トムクルーズ)、大学を出ていないことから雇ってくれる企業はなく、ひょんなことからバーテンダーの道を目指すことに・・・・・・。

師匠であるダグラス(ブライアン・ブラウン)との息の合った『フレアバーテンディング』に一見の価値あり!とにかくカッコイイ映画です。

さて、ダグラスと初めて出会うシーン(上の動画にあります)に、なんと!

たまご入りのカクテル「レッドアイ」が出てくるんですね。

レッドアイというと日本でもメジャーになっているカクテルで、「ビールをトマトジュースで割ったお酒」という認識がほとんどかと思いますが、実はすーこし違います。

映画中ではダグが「こいつはバーテンダーの朝食だ。」と言っていますが、

ビールをトマトジュースで割り、スパイスと共に生卵を割り込んで一気に飲む、もともとは朝の栄養ドリンク的飲み物なんですね。(迎え酒専用という説も!?)

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生たまごは混ぜずにそのまま!で飲みます。

赤い液体のなかに黄味がうっすらと“目”のように見えることから「レッドアイ」と呼ばれるようになったのだとか。

うーん。なかなかインパクトがありますねェー。

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トムクルーズふんするブライアンも作中でこの飲み物を勧められて、「うへーッ、マジかよ!?」みたいな表情になっています。

 

◆意外と多い!?、生卵を使ったカクテル◆
生たまごを混ぜずにそのまま、というのは極端ですが、カクテルには卵黄・卵白をつかったレシピはたくさんあります。

黄味でまろやかさを出すラム酒ベースの「インディアンサマー」

卵白で雪のようにふわっとした食感がたのしめるジンカクテル「カフェ・ド・パリ」なんかも有名ですね。

日本にも「たまご酒」の文化はありますが、ことお酒に関しては西洋の方が種類も多く洗練されているイメージですね。

面白いことにカクテルは、西洋の数少ない「伝統ある生卵料理」でもあります。

生食対策としての考えも読み取れて、卵の視点から見ると大変興味深いです^^

ぜひこの映画「カクテル」でも、カッコイイお酒文化に触れてみるのはいかがでしょうか!?

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(関連:たまごのソムリエ日記 - たまごの名シーン【映画編】の一覧)

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

偉人と卵のエピソード第5弾!

今回は誰もが知っている天才音楽家、モーツアルトさんです。

彼は大の卵好きだったのをご存知でしょうか?

『モーツアルト風目玉焼き』

というものがあります。これは、『最低でも4個』のたまごを使った目玉焼きの事を言います。

実際の史実では、6個!

モーツアルトは、自分が作曲する興行師の家に招かれるたびに、必ず食事で黄味6個の目玉焼きをリクエストしたのだとか。

 

◆貧乏からの逆転発想!?
なんでこんなに卵好きだったのか??

それは、『常に貧乏だったから』とも言われています。

モーツアルトは博打好きでとにかく浪費家であったようです。

沢山作曲して、いくら稼いでもその端から使っちゃうわけですね。

うーむ。

お金がない。食べるのにも困っている。とにかく他人の家でごちそうになるなら、栄養のつくものをため込まなくてはいけない!

そこで「卵だな。」

そう考えたんじゃないかというお話ですね。

たまごは完全栄養食とも言われるくらいのバランスよく栄養が摂れる食材です。なるほど理に適っているとも言えますね。

 

◆たまごが産んだ天才性!?
たまごの黄身に多く含まれる『コリン』という物質は、最近の研究によると“記憶を向上させる物質”だと言われています。

アルツハイマーにかかった方の脳からは、このコリンが極端に少なくなっているとの研究結果も出ています。

また、モーツアルトはとにかく記憶力が良かったと言われています。

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12歳の時にローマに行った際、門外不出として譜面持ち出しを禁じられた秘曲「ミゼレーレ」を、大聖堂での歌として聞いただけで全て覚えて写譜してしまったという仰天のエピソードが残っているくらい。

もしかすると、卵好きがモーツアルトさんの天才性に影響していたのかもしれませんね!?

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

関連:鉄血宰相ビスマルクの目玉焼き愛 – たまごのソムリエ面白コラム

関連:川の水をくみ、自分でゆでたまごを茹でていたフランス王 – たまごのソムリエ面白コラム

関連:2週間で9kg減!?鉄の女・サッチャー首相のたまごダイエットレシピ- たまごのソムリエ面白コラム

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こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

熊本地震、大変なことになっていますね。

被害にあわれた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、余震が続く中、これ以上の被害が無き事を祈るばかりです。

我々もできることがあれば、と考えております。

3県19万戸におよぶ停電が発生しておりますが、被害が少ない地域であっても大変なご苦労をされておられるかと思います。

たまごに関してですが、停電によって常温保存状態になったとしても、ある程度であれば、食べることに問題はありません。

もちろん生鮮食品ですので、原則として冷蔵保存をすることが望ましいのですが、生肉や鮮魚のように、いきなり食べられなくなるわけではありません。

あくまで期間が変わるだけです。

イギリスのハンフリー博士の研究に基づく、鶏卵日付表示等検討委員会が作成した「鶏卵の日付等表示マニュアル」に記載されていた”生食期限の算出例”を考えると、20℃保存で30日、25℃保存で21日の期間、生食ができます。(※1)

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熊本県付近の本日気温は21℃。 基本的には室温での保存状態が数週間続いたとしても十分食べることは可能です。(あっては困りますが・・)(※2)

 

◆昔は保存食だった卵
ジブリ映画「火垂るの墓」では、空襲の前に地面に埋めた卵をしばらくして取り出す、というシーンがあります。

 昔においては、たまごの位置づけは「保存食」でもあったんですね。

あっては困りますが、もし食料の流通が不十分な地域がでるようでしたら、『しばらくの間停電となってしまっていても、たまごは食べることが可能』、ということを記憶にとどめていただければ幸いです。

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

(※1:賞味期限表示方法としては現在は産卵21日以内を記載するという業界基準に変わっております。上記のデータとは異なっておりますので、あくまで指標とお考えください。ちなみにウチの場合は出荷日から15日が基準です^^)

(※2:ただし、黄味と白身のあいだで水分交換がおこるなどして食感が変わっていきますので、美味しさは落ちます。あくまで生食「可能」ということです。また、ひび割れなどがあるとすぐ腐りますので、注意が必要です。)

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごのビックリ科学 2016年04月16日

こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。

鶏さんは、日本書紀の昔より「朝告げ鳥」と言われておりまして、文字通り朝を象徴する鳥だったりします。

では、「夜」を象徴する鳥っていうとなんだと思います・・・!?

「ふくろう・・かなァ。」

そんな声が多そうですが、

古くから「夜の鳥」を表わすもの・・・・・・、それは妖怪だったんですね。

夜の鳥、一文字で書くと「

「ぬえ」

と読みます。

「古事記」「万葉集」「平家物語」などに登場し、夜にヒョーヒョーと不気味な声で鳴き『これを聞いたものは不吉が訪れる』とされていました。

見た目はというと、

「顔がサル、胴体はタヌキ、手足は虎で尻尾はヘビ」(平家物語)というとんでもないモノで、ものの本によっては胴体がニワトリだったりするようです。

うん、まったく鳥じゃありませんね(笑)

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現在は、この“ヒョーヒョーという声”という記述は『トラツグミが夜鳴く声』というのが定説のようです。

youtubeにあったトラツグミの声はこんなカンジです↓

なるほどー、口笛吹いてるみたいな音色ですねー。

夜に聞こえてきたらちょっと気味悪ィかもしれません。

平安時代には鵺(ぬえ)の鳴き声(トラツグミの鳴き声)が聞こえると、「凶鳥の声だ!」として祈祷を行い難事を避けようとしたそうです。

そもそもは

夜に鳴く変な鳥がいる(現トラツグミ) →鵺(ぬえ)と呼ぼう

→鵺(ぬえ)そっくりの声で鳴く怪物がいるらしい →じゃあそっちを鵺(ぬえ)と呼ぼう

という流れでヌエさんが怪物化しちゃったんですね。

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ニワトリさんは、朝を告げ天照大神を天岩戸(あまのいわと)から出す役を担った事から、『神に近い鳥』とされています。

たとえば、神社の鳥居は、神に仕えるニワトリさんの止まり木です。

朝鳴く鳥は、神の鳥

夜鳴く鳥は、凶兆を呼ぶ鳥

うーん、

ちょっとした時間の違いでこの扱いの差・・・・・・

理不尽ですねェ・・・・・・^^;

ここまでお読みくださって、ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , 鶏さん・鳥さんのコト 2016年04月12日