小林ゴールドエッグ

ソムリエ日記 SOMMELIER DIALY

ソムリエ日記 記事一覧

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

スリランカ発のニュースで昨日
「価格統制が撤廃されて
卵の値段が55ルピー下がった。」
という報道がありました。

Egg prices drop in Sri Lanka after control prices were removed(https://www.newsfirst.lk/2023/07/26/egg-prices-drop-in-sri-lanka-after-control-prices-were-removed/)

これ、なかなか興味深い話なんですよ。

 

現在、
経済危機にあるスリランカでは
通貨ルピー安が加速して
食料品がとんでもなく
高騰しているんですね。

そこでスリランカ政府は
インフレ対策として、
価格高騰しているコメ、砂糖などの
食品をはじめ生活に欠かせない
消費財の価格統制をしているのです。

卵もその中に含まれていました。

で、それに、
業界が猛反発していたのです。

なぜなら、
戦争の影響や不作の為、
世界的に穀物が高騰し
輸入飼料がとんでもない値段に
なってまして、

 

生産コストが爆上がりしてるのに

「売値を抑えられたら
たまったものじゃない。」

と生産者さん、販売者さん双方から
大きな不満がでていたのです。

同様のことはマレーシアでも
起こって去年炎上騒ぎになってました。

 

で、ですね。
スリランカ畜産協会が

「統制価格が撤廃されれば
卵の価格は下がるよ。」

って言っていたんです。

 

・・・ん!?

ちょっとオカシイですよね?
価格が高騰するから
それを抑制するために価格統制
したんですよね!?

なのに、
それを止めたら価格が下がるって
どういうこと・・・!?

 

じつは、
協会の会長いわく

「卵の価格が高騰したのは、
統制価格が実施されて
供給が不足したため」

だったのです。

つまり、
「コスト上がってるのに
卵を安くしか売れない。
なら生産するほど赤字になる。
作ってもしょうがない。」

となって、
大減産が起こっていたのです。

足りないから高い→
高いから価格統制する
→だから作らない
→さらに足りなくなる・・・

ということですね。
うーん。

じっさい、
不足している分の卵を
一日あたり100万個も
おとなりインドから輸入
してまして、その分
貿易赤字が拡大しつづけていたのです。

で、価格統制を撤廃したところ、
ホントに鶏卵価格が下がった!
というニュースとなったわけですね。

 

 

◆コントロールの難しさ

教訓としては、特に畜産では、
いきなり価格を抑えにかかるよりも
需給バランスを考える方が
効果があるかもしれないってことです。

 

これ、日本の場合も同じでして、
現在たまごが高騰してますよね?

鳥インフルエンザまん延によって
1800万羽のニワトリがいなくなったのが
主な原因なのですが、

その事態の半年前までにすでに、
前述の世界的飼料高騰による
減産・廃業が日本全国で起こっていまして、
そもそも遠からず不足することが
予想されていたんです。

トウモロコシが落ち着いたと思ったら
先週のロシアのウクライナ穀物施設攻撃で
ふたたび小麦が高騰しつつありまして、
日本国内のたまご不足はさらに
長びく可能性がありますね・・・。

スリランカのように
供給面からの解決が
危急の問題です。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

(関連:「たまごが高いなら減らせばいいんじゃない?」でマレーシア政府高官が炎上 | たまごのソムリエ面白コラム

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまごの海外ニュース 2023年07月27日

「暗黒の夜を追い払い,
光明の太陽を呼び出す神秘な鳥」

・・・って何だと思います?

ファンタジー映画の世界じゃありません。
じつはニワトリのことなんです。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

 

梅雨があけまして、
太陽カンカン照りの夏ですね!
テンション上がります。
そして、

太陽・・といえばニワトリ

なんですね。

 

◆太陽とニワトリのつながりは強い!

「ニワトリ=太陽の関係者」

じつは太古の昔から、
この2つは世界中で
関係づけられてるんです。

 

かつてニワトリさんは
「食用」ではありませんでした。

人間と出会った頃は
セキショクヤケイという種で
ハトよりちょっと大きいくらい

クジャクなど、
もっと大きくて肉もおいしくて
たまごも多く生む鳥が
ほかにもたくさんいたんですよ。

 

にもかかわらず
家畜として広く飼われ始めた
その理由の一つに、

「時間の正確さ」

があります。

 

朝、夜が明けるとかならず鳴く。

ようはアラーム、目覚ましです。

これが、昔の人々にとって
たいへんたいへん
貴重な存在だったのです。

狩猟から農耕化するにしたがい

「規則正しい生活ができるぞ。」

という価値が大切になったので、
めちゃくちゃ必要になりまして、さらに

「あのトリが鳴いたら
かならず太陽が昇ってくるな。」

となり、
「ニワトリって太陽とつながりあるんじゃ・・・!?」
となったわけです。

 

じっさい、たとえば日本では鶏は

「暗黒の夜を追い払い
光明の太陽を呼び出す霊鳥」

として重要視されていました。

最古の歴史書『古事記』では
太陽の神様が隠れ
世界が暗黒となった際に、
常世の長鳴鳥(ニワトリ)を
た~くさん集め鳴かせて、
岩戸の外に出させてます。

 

中世ヨーロッパでも
雄鶏太陽の象徴となってまして

悪魔を追い払うものとして
家の屋根や教会に模型が取り付けられ
ローマでは戦士の兜にも
意匠として必ずつけられていました。

その影響か、
いまでもフランスでは
雄鶏は『勇気の象徴』です。

インドなんかすごくって、
古代インドでは太陽崇拝と結びついて
『霊鳥』として「食べちゃダメ」と
禁止令まで出ていたくらい。

中国でもおなじく霊鳥あつかいでした。

 

◆ニワトリ自身は暑さが苦手

とはいえ、ニワトリさんは
暑いのが得意ではありません。

なにせ天然のダウンジャケットを
年中着込んでますから、
体温調節にはちょっと苦労してまして

夏場は食欲も落ちるため、
環境や飼料の配合にも
工夫が必要になってくるんです。

バテても食欲のわきやすい配合に
するんですが、
これって人間と似てますよね。

 

放し飼いでも、日中はこの時期
太陽を極力さけるように
日陰に集まっています。

『太陽を呼び出す存在』なのに、
なんだかおもしろいですよね。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

(参照:英米文学鳥類考 桝田隆宏)

カテゴリー | ソムリエ日記 , 鶏さん・鳥さんのコト 2023年07月26日

今日は一般の方むけのお話です。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

夏休み、お父さんお母さんも
子供の自由研究何にしよう・・・!?
なんてお悩みではないでしょうか。

ウチもそうです。

そこで、たまごですよ。

あなたの身近にある
生命の源な神秘の題材
それが、卵なんです。

なんと言っても準備がラクです。
手元に常にありますから。


本日は、
卵を題材とした自由研究で
楽しくできるものを3つ
ご紹介します。

 

その① なぜ!?思い切り投げても割れない卵

卵を使って物理学について学べます。

手でもってシーツを広げます。
ちょっとたわませて下側を凹にしておきます。

そこへ、
思い切りフルスイングで
たまごを投げ込むんです。

 

すると!カラはキレイなまま割れません。

これは、
力のかかり方と時間の関係によるんです。

なんて力積と運動量の式がありますが、

 

つまり、
大きな力がかかると当然卵が割れちゃいます。

ですが、
時間をかけてその力が
少しずつ分散されると、
卵は割れないわけです。

固い床のばあいは落ちた瞬間に、
つまりすべての力が一瞬にかかるので、
10センチくらい上部から落とすだけの
弱い力でも割れちゃうわけですね。

ちなみに慣れると、
衝撃の時間を長くズラすことで、
かなり遠くからたまごをキャッチしたりも
できるようになります。


視覚的にもインパクト大ですので、
お子さんと楽しんで学ぶのには
おもしろいんじゃないでしょうか。

あ、万一割れちゃうと汚れますので、
たまごはビニール袋なんかに
入れて試す方が良いかもです。

 

その② 卵のカラでつくる絵の具!

たまごのカラは多孔質で、
ミクロの微細な穴がたくさん開いているんです。

色素をはじめ「水と油」両方の成分を
吸いつける珍しい作用があります。 

このため化粧品の保湿剤に脱水剤、
凝固剤など天然由来原料として
様々な用途で使われています。

そして、この効果は
絵の具にも使えるんですね。

こんな日本画風の絵が描けます。

色合いがステキですよね~。

 

粉末にするものなど
ちょっとした道具をそろえれば
ご家庭でもカンタンにできますので、
夏休みの研究にはピッタリです。

(作り方はコチラ→たまごの殻で絵の具を作ろう! | たまごのソムリエ面白コラム

 

その③ お酢でボヨヨンたまご

これは結構ポピュラーな実験です。

コップなどにお酢を入れて、
たまごを漬けてやる。

すると、
炭酸カルシウムのカラが
酢酸に溶けてしまい、
中の薄皮&中身だけが残るんです。

まるでゴムボールのような
ぽよんぽよんになります。

視覚的にすごく分かりやすいので、
化学反応について親子で学べます。

カンタンですので、
低学年のお子さんにもピッタリです。


いかがでしたでしょうか。

夏休みはまだこれから!
ぜひ、卵を使って
わくわくの研究で楽しんでくださいませ~。

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , たまご全般コラム 2023年07月25日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

夏は納涼!です。

水木しげるさんの妖怪にたくさん
触れてきましたので刺激を受けまして
昨日につづいてちょっと妖怪ばなしを。

 

たまごにも妖怪っているんです。

いくつかありますが、
たとえば長野県飯田市の伝承で、

食べるとどんどん増える卵

というものがあります。


山に入った男が鳥の巣から卵を獲ってきた。
8人で集まって「煮て食べよう。」
ということになり

皆で食べたところ・・・

いくら食べても食べても、

食べるごとに
卵がどんどん増えていく
・・・

『これは神さんの卵だったんだ・・!
罰があたったんじゃ!』

と恐れおののき、神社へ行って
日待ち(寝ないで朝まで祈祷すること)
をしたという。


うーん、
消費するほど増えるたまご。

たまご屋としては少々
うらやましいですが、

実際そんなことになったら
めっちゃ怖いですね!

 

ドラえもんのバインバインみたいな
恐怖感があります。

じっさいの所、
たまごを獲って食べるのは、
江戸時代までは
仏教で禁じられていました。

平安時代に書かれた仏教の説話集でも、
「たまごを煮て食べて罰が当たる話」
が出て来ます。

また、卵=畏れ敬うもの
というイメージもありまして、
高僧の行基さんなど立派な人が
卵から生まれたとする逸話も
アジアにいくつもあるんですね。

つまりこの卵増殖おばけ伝説も、

ばちがあたるから
卵は大事に扱えよ

という説話ですね。

 


もうひとつ、
お隣韓国には
超有名な卵妖怪がいます。

卵鬼神

って言います。

ちょっと新しめの妖怪(都市伝説?)で、
学校のトイレに出るんだそう。

 

細い手足がついていて
逆立ちになって手で歩く

歩くたびにアタマのカラ部分があたるため
近づいてくるとコンコンコンと音がする

 

個室に入っていると、
さかさまなので下から覗いてくる・・・

なかなかシュールですねぇ。

日本で言う「トイレの花子さん」
的な感じです。

韓国の卵妖怪と日本の女の子おばけ、
どっちが怖いでしょうね。


ちなみにヨーロッパにはほぼ
たまごの有名な怪異的存在は
いません。

どちらかというと逆で、

たまごは『聖なるもの』

のイメージが強いんです。

たまごをぶつけて
悪い竜を退治する伝説とか

たまごのカラで悪い妖精を
追っ払う話とか、
やっつける側なら
それはもう、
た~くさんの伝説が
残ってます。

 

卵=聖なるもの
というイメージが、
キリスト教普及後も残っていて
イースターなどの卵お祭りに
繋がっているんですね~。

インバウンド需要などでの
飲食店さんのたまご表現にも、
もしかすると差が必要なのかも
しれません。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

(関連:【納涼】たまごのちょっと怖い伝説 その1 | たまごのソムリエ面白ブログ

(関連:たまごが竜を倒す伝説 | たまごのソムリエ面白ブログ

カテゴリー | ソムリエ日記 , 面白たまご話 2023年07月24日

こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

少し前に、休みを利用して
妖怪で有名な島根県の境港
「水木しげるロード」
に行ってきました!

人生で二回目なんですが、
この雰囲気好きなんですよね~。

この、全力で乗っかる、
盛り上げようという意思が
すごくステキです。

商売っ気込みで、
本気の遊び心を感じます。

なにせドコを見ても・・・

何を買っても
かならず妖怪なんですよ。

 

妖怪の銅像も通りにたくさん
あってそれだけ見ていてもたのしいんですね。

ウチの息子がゲゲゲの鬼太郎の大ファンで
さながらデータベース状態で
すべての妖怪を解説してくれるので
大変助かったのですが、

そこまでマニアじゃない方には
銅像の台座にはQRコードが付いていて
読み込むと妖怪ごとの詳細な解説がでます。

 

そして、

「夜のライトアップがいい。」

と聞いたので昼だけでなく、
夜も行ってみました。

想像以上でした。

こんなカンジで街中が

妖怪モチーフの影絵調に
ライトアップされてるんです。

かなりカッコいいんですよ。

妖怪の銅像もライトアップされていて
昼間見るよりもなんだか迫力が。

ベンチ(?)に座って写真を撮るだけで
おどろおどろしい雰囲気になります(笑)

 

お店のしまった通りなんて普段、
おそらく百分の一も人は来ないでしょう。

ですが、

妖怪がテーマであれば、

その寂れた暗いカンジを逆手にとって
逆に魅力に変えられるんですね。

 

マイナスな部分を
魅力に変えてしまう。
この目の付け所はすごいと感じますね~。


そして、

これって、
飲食店さんでも
活用できるアイデアです。

たとえば親子丼
わざわざ自分でたまごを選んで作る
というお店さんがあります。

好きなたまごを2種えらび、
手元で加熱してごはんにかけて
食べるんですね。

これす~ごくワクワクが
あって美味しい「体験」なんですよ。

ひとつひとつ出来たてを
作らなくちゃいけない
という親子丼の制約を、

うまく「待つ」ワクワク感に変えてしまう。
ステキですよね~。

 

または、置く場所の無さ
バックヤードの無さから、
いっそ目立つように食材の
在庫を置いてしまう。

これも、マイナス的要素を
うまく活かす方法でもあります。

ぜひ、あなたのお店でも、

「全力で乗っかる」

「ここがネックだなあ。」
と感じる部分を
『活かす』方法を考える

これらをやってみませんか!?

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , ワクワクすること 2023年07月22日

こだわり卵って
なぜ必要なのか?について。


こんにちは!
たまごのソムリエ・こばやしです。

マジシャンの
ナポレオンズ・パルト小石さんが
『デパートで見た石鹸の実演販売』について
生前に書かれたコラムがあります。

たまたま通りがかった売り場で
石鹸の手洗い実演販売をしていた。

マジシャンという商売柄
その伝え方が気になって見てみたら

水とその石鹸だけなのに
汚れたシャツが
ビックリする
くらいみるみるキレイになり、

その鮮やかな効果に感動して
さっそく買って帰って
ウチで愛用した。

しばらくして、ふと、

昔から使っている石鹸でも
同じように汚れをこすってみると…

まったく同じように
キレイに汚れが取れた。

ようするに、
いままでそんな丁寧に
磨いてなかっただけだったのだ。

 

・・・というようなお話だったかと思います。

十五年前くらいに読みましたが、
とても印象に残っています。


これって、
たまごでもあるハナシなんですね。

高い卵を買ってみた。

久しぶりに
卵かけ御飯で食べてみたら
もうビックリするくらい
美味しくって感動して
ファンになったよ。

 

こんなお話を聞くことがあります。

ウチのたまごの話だったりすると、
ホントに、心底うれしいエピソード
で躍り上がりたくなるのですが、

そんなとき、
上記のパルト小石さんのエピソードを
思い出すんですね。

 

その方はもしかすると、

『普段は卵かけごはんなんてしない。
でもせっかく良いたまごだから、

アツアツ炊き立てごはんで
薬味も添えて
じっくりそれだけ味わってみよう。』

となって、

『おおっ・・・!
これはスゴイ美味しさだ!!!』

と感動してくださったのかもしれないんです。

すなわち、

普段食べている白たまごでも、
アツアツ炊き立てごはんで
そっと丁寧に割って食べると
超おいしい

・・・ということかもしれない。

 

たまごによって
向き不向きはありますが、

たまごってそもそも
美味しいんですよ。

こだわり卵としての
底上げがなくても。

 

ですので、
ウチのたまごをほめていただいた時に
めちゃめちゃ喜びつつも、

それがもしかすると
商品としての「差」の部分じゃなくて
卵という物体そのものが褒められている
かもしれない、

慢心しちゃいけないなあ。
と肝に銘じています。

 

これって、どの商売でも同じかもしれません。

建設業だってそう。
住んだお客さんが
超満足していても、

その工務店さんの家だからなのと、
「新築」そのものが素晴らしいのと
ごっちゃになっているかもしれないんですね。


そして、
意図的にそれを混同させる方法も
あるんじゃないかと思うんです。

たまご・食材や料理の
こだわりどころを
きちんと伝えることで、

 

相手に丁寧に食してもらえ
それが感動につながるんです。

商品質の差 プラス
お客さんの意識の差
取り扱いの差
を引き出すことができる。

それこそが、
こだわり食材の
大きなメリットだと思います。

 

「なんにも書いてなくても
食べればウマいから分かるはずだ!」

なんておっしゃるかもしれませんが、
お客様の意識として、
テキトーに醤油をかけられる
可能性を排除できて、

スマホ見ながらじゃなく
一口目をちゃんと味わってもらえる

これだけでも、
『こだわり食材』という「情報」の
価値なんですね。

なので、しっかり伝えないといけないわけです。

 

ここまでお読みくださって、
ありがとうございます。

カテゴリー | ソムリエ日記 , ちょっとつぶやき 2023年07月19日