たまごが竜を倒す伝説
こんにちは!たまごのソムリエ・こばやしです。
スペインのバスク地方というところに、面白い竜の伝説があります。
ある山に、恐ろしい竜が住んでいました。
頭が7つ、体は大蛇のように長く恐ろしい風体で、夜ごとに美しい娘を食べに村にやってくる。
今宵も生贄に選ばれた娘が、洞窟の前に座らされました。
ところが、今度ばかりは!とある若者が立ち上がったのです。
装備を整えて、娘を食べにやってくる竜を待ち構えた。
果たしてやってきた7つ首の竜に若者が切りかかり、戦いが始まりました。
若者もかなりの手練れで、竜とすさまじい戦いを繰り広げます。
と、戦いの合間に若者が、
「ああちくしょう、もし今、一杯のワインと、この娘さんの麗しいキスがあれば、お前なんかすぐやっつけてやるのになぁ…!」
と竜に向かって叫びました。なかなかキザですねェ。
すると、竜が答えたのです。
「ウワハハ!!そんなものでワシを倒せはせんぞ!!ワシに勝てるのは、この額に卵をぶつけられる者だけだッ!!」
そのやりとりを横で聞いていた娘は、サッと村へ取って返し、卵を持って帰ってきました。
「卵よ!」と、若者にその卵を渡し、共に投げつけたところ、
竜の額に当たって、アッサリ竜は死んでしまったのです。
めでたしめでたし。
ええ……!?
そんなので良いの…!?
……とは思いますが、実は「卵が竜を倒す武器」なのは“竜の伝説”としてはわりと良くある『定番』なんだそうです。
謎のおばあさんからもらった卵だったり
たまごに呪いをかけて武器(?)にしたり
黄身の無い特別な卵だったり
そんな卵で竜を倒す似たお話が各地にあって、西洋の人からするとそこまで奇異なストーリーではないのだとか。
うーん…、日本で「山んばをとんちで退治する」話にいろんな地方バリエーションがあるような感覚でしょうか。
〇たまご=聖なるものという古い信仰
キリスト教以前の信仰でもあるのですが、「たまご=聖なるもの」という考え方はヨーロッパでも広く見られます。その一部が残り、イースターエッグや断食明けの卵投げなどのお祭りと結びついているんです。
卵に対する敬愛する空気感といいますか、日本で言う鯛を「お祝いイメージ」でとらえたり、中国で桃が「不老不死の聖なるもの」として見られたりするような、そんなポジティブなイメージが卵に見られていて、たまご屋としてはなんだかうれしいですね。
ここまでお読みくださって、ありがとうございます。